「プロセス」という言葉はビジネスシーンでよく使われます。例えば「プロセスを大切にしろ」「プロセスよりも結果がすべてだ」というようにです。あまりにも一般的な言葉であるため、「プロセス」という言葉の意味を改めて考える機会はないかもしれません。

 プロセスは、日本語では「工程」もしくは「過程」と訳されます。しかし、プロセスデザインアプローチでいうところの「プロセス」の定義はもうすこし厳密です。「資源を活用して、価値を産み出すための一連の取り組み」を指します。こう言われてもピンとくる人は少ないでしょう。もう少し一般に分かりやすくたとえを使って表すなら、プロセスとは料理における「レシピ」に相当するものです(図1)。

図1●プロセスは「レシピ」である
図1●プロセスは「レシピ」である
良い材料と一流の調理技術を揃えても、それをうまく活かせるレシピがなければおいしい料理はできない。ベテラン技術者を抱え、高い技術力を持った企業が不具合を出したり、納期を外したりするケースも同じ。技術力が原因なのではなく、プロセス(=レシピ)に問題がある
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 レストランのシェフがいるシーンを思い浮かべてみましょう。シェフの目の前には、一流の調理器具が揃っており、野菜や肉、調味料など、世界各地から取り寄せた新鮮で質の高い材料が並んでいます。当然、シェフはこれらの材料を切ったり、煮たり、焼いたりする一流の調理技術を持っています。

 では、これだけで実際においしい料理ができるでしょうか。答えはノーです。何かが足りません。そうですレシピです。一流の材料と一流の技術があったとしても、それをうまく活かすためのレシピがなければ、おいしい料理はできないのです。

 知識や技術力は、必ずしも成果に直結しません。ベテランの技術者や、高い技術力を持った企業が、不具合を出したり納期を外したりしてプロジェクトを失敗させてしまうのは、技術力が原因なのではなく、プロセス(レシピ)に問題があるということなのです。