みなさん、はじめまして。プロセスデザインエージェントの芝本秀徳です。本特集では、システム開発などのプロジェクトを成功に導くための大切な要素である「プロセス設計」と、そこから展開する「プロジェクトマネジメント」について解説していきます。まずは自己紹介を兼ねて、なぜ私が専業コンサルタントとしてこれらを追い求めることになったかというところから話を始めましょう。

「デスマーチ」体験からプロセス設計の重要性を知る

 大学卒業後、私はソフトウエアエンジニアとして、ソフトウエアベンダーに入社しました。新入社員研修が終わり、その後はひたすら組み込みソフトウエアのテスト業務に取り組む日々が続きました。これが数カ月ほど続いた後、初めて開発メンバーとして参加したプロジェクトが、まさに“デスマーチ”となったのでした。

 いつ収束するとも分からない不具合。本当の納期は客先の担当課長だけが知っていて、私たちは設定されたムチャな納期のギリギリまで、連日泥のように働く。納期直前になって「実はまだ一カ月あるんだ」と言われ、限界を超えてさらに働くことを強要される--。そんな日々が半年以上続きました。

 このプロジェクトに参加していたとき、不思議なことに気が付きました。先輩や上司にあたるエンジニアは、決して技術力が低いわけではありませんでした。むしろ、知識も技術も経験も豊富に持っている人ばかりです。それなのに不具合がたくさん発生する。直せど、直せど、次から次へと出てくる。当然、設定された納期も守れない(もともと達成不可能な納期ではありましたが)。

 技術も能力がある人たちが集まり、長時間働いても結果が出せない。これはなぜなのだろう? 技術や知識、個々人の能力が成果に直結しないという現実。このことを問題意識として強く持つようになったちょうどそのころ出会ったのが「プロセス設計」という考え方でした。「最終成果物の品質は、それを生み出すプロセスの品質が決める」という考え方です。このとき、それまで疑問に思っていた「知識や技術が結果に直結しないのはなぜなのか」という疑問が氷解しました。