「10分1000円」という低価格・短時間で散髪する「QBハウス」を展開するキュービーネット(東京・渋谷)。ここ数年、国内では年間40店舗、海外ではシンガポール、香港、台湾の3カ国で年間20店舗のペースで新規出店を続け、既に国内外で500店舗以上に拡大。年間の来店者数は1500万人を突破した。

QBハウスの外観。国内外に500店舗以上ある

 2012年6月期の売上高は116億円、営業利益10億円を超える。QBハウスといえば、人々が行き交う駅の構内にあり、大量のビジネス客のヘアカットをこなす“労働集約”的な理髪チェーンというイメージがあるかもしれない。

 躍進の鍵は、スタイリストの高度な理髪技術や、入念な出店・店舗開発があってこそ。だがそれだけではない。あまり知られていないが、綿密なIT戦略とデータ分析がその成長を支えているのだ。

データ収集の仕組みはシンプル

 「店舗と来店者数が増加しても、10分1000円というオペレーションを徹底するために、店舗管理システムとデータ分析手法を進化させている」。キュービーネットの北野泰男社長はこう詳細を明かす。キュービーネットはこれまで、数年おきに店舗管理システムを改良。現在は第4世代のシステムを稼働させている。

 目玉はデータ収集にある。まずは店舗情報。来店した顧客の待ち時間やヘアカットにかかった時間などをリアルタイムで逐一収集し、10分ヘアカットの徹底と待ち時間の短縮に役立てる。

 データ収集の仕組みはシンプルだ。データ分析とはいえ、力まず身の丈に合ったデジタル化で、顧客に利便性の高いサービスを提供している。

 顧客はまず、店舗の入り口に設置してある券売機で利用券を購入する。ここでシステムには、顧客の来店時間データが記録される。待合席にいる顧客は自分の順番が来ると、利用券を「スタイリスト」と呼ぶQBハウスの理髪担当者に渡す。スタイリストはヘアカット席の近くに設置してあるタッチパネルを操作し、顧客の性別、世代、リピート客かどうかといったデータを入力し、ヘアカットを開始する。

 この時点で、待っている顧客の人数と顧客の待ち時間が分かる。それと同時に、ヘアカット時間の計測が始まる。ヘアカットが終わると、「エアウォッシャー」と呼ぶ装置で、毛くずを吸引して仕上げにかかる。エアウォッシャーの電源オフが、カット終了の合図だ。こうして顧客ごとにかかったカット時間を把握する。