統計学やデータ分析がブームだが、数字算出だけでは仕事は前に進まない。それを共有するITシステム、行動につなげる人材、戦略を決める経営と多角的に動いてこそ、データが生きてくる。データ分析が、人材の活躍の場を広げて、企業競争力を高めるには何が大切か。データ経営を実践する企業の現場と経営者らから考える(全6回)。


 2013年9月20日。ヤマトホールディングスは延べ床面積約20万平方メートルの巨大物流拠点「羽田クロノゲート」を稼働させた。24時間稼働、最新のマテハン機器の導入による発着同時仕分けを可能にする。海外から輸入した部品をジャストインタイムで国内拠点に配送できるメリットを生かし、企業間物流事業にも本格的に参入する。8月に稼働した「厚木ゲートウェイ」や、今後中京、関西で建設予定の国内物流向けスーパーハブを活用し、大都市間での即日配送体制も強化。総額2000億円を投じて国内外を高速で結ぶ物流網を構築する。

2013年9月に稼働した羽田クロノゲート
24時間稼働し、発着同時仕分けが可能なクロスベルトソーターを導入(厚木ゲートウェイ)

 そのヤマトが現在、IT戦略で最も重視するのがビッグデータ活用だ。ヤマトホールディングスのCIO(最高情報責任者)を務める小佐野豪績執行役員は、「ヤマトグループの基幹事業である宅急便は、小口貨物の市場を切り開き、新たな需要を作り続けてきた。しかし市場の伸びは徐々に鈍化し、競争は厳しくなっている。まさにゼロサムゲームだ。お客様に喜ばれる新しいサービスで需要を開拓する一方で、お客様一人ひとりに対応したサービスを提供することで、顧客満足と業務効率の双方を同時に上げていかなくてはならない」と話す。

「空振り」情報を分析、配送効率を上げる

 そのため同社が力を入れるのが、宅急便の配達伝票のフルデジタル化である。1年分の配達伝票をスキャナーで読み込んで画像データ化していたものをテキストデータ化して、データベースで一元管理する。

 伝票に記載された配送先の情報をデータベースに登録し、セールスドライバーがポータブルPOS(PP)端末に入力している配達情報を結び付ける。顧客が荷物を受け取った時刻や、不在で持ち戻った時刻のデータなど最新の情報を積み上げ、分析する。

 これによって、配達しても顧客が不在で荷物を持ち戻る「空振り」を減らすのが狙いだ。空振りは配達員の業務効率を下げるばかりでなく、無駄な配送作業が増えることで環境面や安全面にも良くない影響を及ぼす。