現場の事実を客観的な目線で、ありのままに観察して洞察を得る──。消費者へのアンケートやグループインタビューでは引き出せない、本人も自覚していないような潜在ニーズやノウハウを、人の行動に注目して見つけ出す手法である「行動観察」に注目が集まっている。

 この行動観察の第一人者である、大阪ガス行動観察研究所の松波晴人所長に、今はやりのビッグデータと行動観察の関係性について説明してもらう。

 ビッグデータも決して万能ではない。人の行動の履歴は蓄積できても、その行動の理由や背景は、ビッグデータからだけでは分からないことが多い。ビッグデータを扱えるようになったことは世の中の大きな進歩だが、まだまだ限界があるのも事実だ。それを正しく理解して、場合によってはビッグデータの弱点を補い、ソリューション(問題解決手段)を考えることが大切になる。

 著者の松波氏は「行動観察はビッグデータと相互補完的な関係にある」と主張する。そこでこの特集では、松波氏の独自の見解を行動観察の視点から初披露していただく。

 なお、行動観察のスペシャリストである松波氏と、日経情報ストラテジーが選出する「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」の初代受賞者である大阪ガス情報通信部ビジネスアナリシスセンター所長の河本薫氏が共同で、2013年11月に東京と大阪で「ビッグデータと行動観察」をテーマにセミナーを開催する予定である(関連記事:日米データサイエンティスト頂上座談会)。

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松波 晴人(まつなみ はるひと)
大阪ガス行動観察研究所 所長
松波 晴人(まつなみ はるひと) 1966年大阪生まれ。2009年に大阪ガス行動観察研究所を設立、所長に就任。1990年神戸大学工学部環境計画学科卒業。92年同大大学院工学研究科修士課程修了。同年大阪ガス入社、基盤研究所に配属。生理心理学、人間工学関係の研究活動に従事。2002年コーネル大学大学院にて修士号取得。2005年エルネットと契約し、行動観察ビジネスを開始。 2006年和歌山大学より博士号(工学)取得。2008年エルネット技術顧問就任。2010年 明治大学サービス創新研究所の副所長に就任。2012年サービス工学会の監事に就任。著書に『ビジネスマンのための「行動観察」入門 』(講談社)、編著に『ヒット商品を生む 観察工学』(共立出版)。