前回、全米広告主協会(Association of National Advertisers:ANA)が発表したレポートから、米国企業のマーケティング活動が、デジタル領域を中心に「内製化」しつつある状況を解説した。実際、デジタルマーケティング関連業務は、何らかのツールの活用により効率化あるいは自動化できる部分がどんどん多くなっている。さらに分析手法も進化し、その後の最適化も比較的容易になっている。

 こうした環境変化を追い風として、米国企業ではこれらのツールを導入し、内部でデジタルマーケティングの運営リソースを確保していく「内製化」が加速している。単にコスト効率を高められるだけでなく、デジタルマーケティングで得られる膨大なデータを自らの手で管理・分析したうえで、小回りが利いたアクションを取れるようになることは確かに魅力的だ。

 その一方で「内製化」がもたらすデメリットも考えておく必要があるだろう。「内製化」にシフトすることが必ずしもよいことばかりとは限らないのだ。

 今回ANAが発表したレポートでは、「内製化」にあたって不利となる点についても調査している。その結果をまとめたのが以下のグラフである。

図1●ANAが発表したレポートで見る2008年と2013年調査結果の比較

 すべての項目は、2008年と2013年の調査結果を比較したものとなっている。「2008年よりも2013年のほうが数値が高い項目」として、企業がデジタルマーケティングを推進していくにあたって課題となる項目が見え隠れしている。

 顕著に表れたのが「人材不足」。5年前は課題であるとの認識すらなかったが、2013年の調査では約3割の企業が課題であると感じており、「内製化」にあたって不利な点であると認識している。これは「内製化」する業務が増大したことによる「人手」不足という面もあるが、それ以上に「専門性の高い人材」が不足していると考えたほうがよさそうだ。それは「技術的バックグラウンドに乏しい」と回答している企業が、5年間で31%から38%に増加していることからも明白だ。