消費税率が2014年4月1日から8%に引き上げられることがほぼ確実となった。一方で、企業の情報システム対策は遅れ気味だ。「消費増税が正式に決まらないと動けないとする声が多い」と大手メーカーやシステムインテグレータの担当者は異口同音に話す。
販売や会計といったシステムの修整や価格マスターの変更など、消費増税に向け情報システム部門が実施すべき作業は多い。帝国データバンクが9月12日に公表した「消費税引き上げに対する企業の意識調査」によると、消費税対策を進める企業の47.3%が「財務会計や販売管理など基幹システムの改修」を挙げる。
消費増税が正式決定する以前から、関連する法規制の整備・施行が着々と進んでいる点にも注意が必要だ(図)。
来年4月1日以降も税率5%が認められる「経過措置」を適用できるかどうかの境目は10月1日となる。建設や予約販売のサービスなど経過措置が適用になるケースでは、9月30日以前に結んだ契約を識別することが重要だ。契約を識別する機能をシステムが搭載していない場合は、「手作業で対応する」といった方針の決定が急務になる。
さらに10月1日には消費増税時の価格転嫁を円滑にする特別措置法(特措法)が施行。価格表示が現在の総額表示に加えて、外税表示も可能になった。流通業を中心に、外税表示に変更した場合のシステムへの影響は大きい。
こうした経過措置や外税表示への対応を含め、多くの企業が来年4月までの半年間でシステムに関する早急な消費税対策を迫られている。
大手メーカーやインテグレータは、企業の消費税対策の本格化に備える。流通業担当者を中心に会議体を設け、5月に社内で情報交換を始めた富士通は「既に一部企業と消費増税時の影響調査を始めている」とする。
NECや日立製作所は消費増税の正式決定後に企業が動き出すと見て、現在は個別に対応している状態だ。
中堅企業向けERP(統合基幹業務システム)パッケージ「OBIC7」を販売するオービックは「製品としては税率マスターの変更で対応できる」としつつ、「企業ごとに実施すべき内容が異なるため、一律の対応は困難」と話す。
業界団体も動き始めている。外税表示については日本アパレル・ファッション産業協会がガイドラインの説明会を8月下旬に開催。日本チェーンストア協会も「ガイドラインを作成する方向で検討している」とする。