システムの設定・運用作業を自動化するオープンソースソフト「Chef」を、大手ベンダーが自社製品・サービスに取り込み始めた。IBM、Microsoft、Amazon Web Services(AWS)の3社は、自社IaaSでChefをサポートし、関連ツールを拡充。エンタープライズ分野でのChefの利用が加速しそうだ。


 サーバー設定作業にかかる時間を短縮したい。設定作業に関するオペレーションミスをなくしたい―。こうしたITエンジニアのニーズに応えるソフトがChefである。

 Chefは、あらかじめ規定しておいた作業手順や設定(いずれもクックブックと呼ぶファイルに定義する)通りに、ミドルウエアやファイルなどを管理対象のサーバーに自動で配置・設定するソフト。作業手順はRubyで記述するため、システムインフラの管理作業をすべてコード化できる。

 システム構築時だけでなく、運用にも役立つ。一度クックブックを設定すると、管理対象のサーバーを誤って設定変更しても、自動的にChefが規定の状態に戻す機能を持つからだ。サーバーの設定を必ず既定の状態に保つことができる。従来は、あらかじめ規定した設定と実際のサーバーの状態がずれてしまうことが少なくなかった。

 さらに、「IaaS(Infrastructure as a Service)上のシステムではChefの良さを生かしやすいため、利用検討を開始した現場が増えている」と、Chefの有償サービスを提供するクリエーションラインの浦底博幸氏(エンジニア)は話す。

 IaaSの利点は、仮想サーバーを必要なときにすぐに使えること。しかし仮想サーバーへのミドルウエアのインストールや設定を1台ずつ実施していては、そのスピードを生かせない。そこで、Chefで設定作業を自動化するのである。

エンタープライズでの採用を後押し

 こうしたニーズを受け、米IBMや米Microsoft、米Amazon Web Servicesといった大手ベンダーが、主にIaaSを対象にChef関連の製品・サービスを拡充している。これまでネット系企業で使われることが多かったChefだが、大手ベンダーの後押しでエンタープライズ分野でもChefの採用が加速しそうだ。

 「IBMはオープンスタンダードをフル活用してクラウドを構築する方針を立てている。その一環で、Chefを積極的に製品・サービスに取り込んでいる」と日本IBMの上村 務氏(ソフトウエア開発研究所 ディスティングイッシュト エンジニア アジア・パシフィック CTO IBMラショナル)は話す。

 IBM、Microsoft、Amazon Web Servicesの3社は自社IaaS上でChefが動作することをサポートしている。ChefはOSレイヤーより上で動作するので、基本的にどのIaaSでも利用できるが、3社はそれに加えて積極的な活用を促している。

 積極的な利用を促している例が、Chefの開発元である「Opscodeとの協業によるクックブックの拡充」と、「Chefを組み込んだツールの提供」である(図1)。

図1●IBM、Microsoft、Amazon Web ServicesのChef対応状況
図1●IBM、Microsoft、Amazon Web ServicesのChef対応状況
[画像のクリックで拡大表示]