著者に聞く

あきみち氏、宮永 直樹氏
あきみち(右)宮永 直樹(左、みやなが なおき) あきみち(右)
本誌連載「インターネットのなかみ」でおなじみのブロガー。
宮永 直樹(左、みやなが なおき)
NECで、OpenFlow製品の販売促進・企画を担当する。
(聞き手は齊藤 貴之=日経NETWORK)

「仕様の心」を解説しています

あきみち氏(あ):本著は、「OpenFlow」プロトコルの解説書ですが、プロトコル自体から離れて説明した章があります。10章の「留意事項」がそれです。「OpenFlowができないこと」などをまとめています。OpenFlowは仕様書を見ても、「何ができないか?」が読み取れません。仕様上は可能でもハードウエアによっては使えない機能もあります。何ができないかがわからなければ、運用するのは難しい。そこで「こういった運用をするとハマるよ」といった内容をまとめました。これまで他からあまり出ていない情報もあると思います。

宮永氏(宮):OpenFlowは国内で大変盛り上がっていますが、中身はまだあまりよく知られていません。例えば、OpenFlow対応のファイアウォールやロードバランサーを開発できないかといった話をときどき耳にします。OpenFlowでは、TCPヘッダーに含まれる情報のうち、ポート番号しか参照できません。このためTCPのフラグを判定に使う、現在の延長線上の技術では、ファイアウォールやロードバランサーを作れません。こういった情報にも触れるようにしています。

なぜ変わったのかがわかる

:特に気を使ったのが「仕様の心」の解説です。OpenFlowの仕様は、バージョンが1.0、1.1、1.2、1.3と上がるたびに少しずつ変わっています。では、なぜ仕様を変更したのか。OpenFlowは、IETFやオープンコミュニティなどで開発される技術と異なり、仕様変更の詳細や背景があまり明らかになっていません。変更には、何か目的があるはずです。それを一つひとつ確かめました。本著を執筆しながら、初めて知ったこともたくさんあります。現状、ハードウエアはバージョン1.0対応の実装がほとんどですが、今後、新しいバージョンに切り替わっていきます。仕様変更に込められた「心」がわかれば、対応も楽になります。

:本著の読み方を1つ紹介します。バージョン1.0の仕様を詳しく説明している2章の後半部分は、もし退屈なら飛ばして3章に進んでください。3章以降で2章の知識が必要なときは、参照を手掛かりに読み返せばよいと思います。OpenFlowによるネットワークの仮想化をまとめた章もあります。ネットワーク技術者の方にはおすすめです。 お二人:あまりこだわらずに、好きなところから読んでもらえばいいです。

マスタリングTCP/IP OpenFlow編


マスタリングTCP/IP OpenFlow編
あきみち/宮永 直樹/岩田 淳 著
オーム社発行
2940円(税込)


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