ソフトウエア技術の中で重要な位置を占めるのはOSS(オープンソースソフトウエア)と言っても過言ではない。OSSの代表格といえるLinux OSは昨年、世界のOS市場で38%を占めた。さらに成長を続け、2016年には44%に達すると見込む。Linuxが登場した1991年、OSS の対応領域はOSのみだったが、それ以降は年々拡大している。

 それを支えるのが圧倒的な開発力だ。世界最大規模のソフトウエアベンダーの社員は10万人に達するが、様々なOSSの開発コミュニティーが世界に広がり、ネット上で100万人以上のOSS開発者が活躍する。進行中のプロジェクトは10万件を超える。世界中のエンジニアが力を合わせながら開発スピードを高め、イノベーションを生み出している。

 ICT(情報通信技術)の世界では、クラウド環境によるパラダイムシフトが起きている。情報システムの柔軟性と効率性を追求すると、企業や官公庁が使うエンタープライズの分野では、アプリケーションやデータを要件や負荷などに応じてプライベートクラウドとパブリッククラウドを使い分けるハイブリッドクラウドが主流になる。そのプライベートとパブリックが混在し複雑化したクラウドをシンプルに共通のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)でつなぎ、最適なクラウドを提供しているのもOSSである。

開発期間は年単位から週単位へ、コストは10分の1になることも

レッドハット 代表取締役社長 廣川 裕司 氏
レッドハット
代表取締役社長
廣川 裕司 氏

 OSSはコミュニティーの圧倒的な開発力によってスピード、コスト削減、イノベーションという価値を生み出す。レッドハットの試算ではOSSベースのパブリッククラウドを導入すると、アプリケーションの開発期間は、年単位から週単位へ、導入期間は週から分へ、と大幅に短縮できる。また、コストを10分の1まで削減することも不可能ではない。以前ならOSSは機能面で商用ソフトを追いかけ、廉価な代用品と位置付けられていたが、今やOSSの機能は商用ソフトを追い越す。

 それを象徴するOSSがOpenStackだ。コンピュータ、ネットワーク、ストレージを効率的に管理するクラウド環境の管理基盤で、コミュニティーが開発に取り組んできたが、このたびレッドハットはエンタープライズの分野でも使用できるRed Hat OpenStack Platformを発表した。

 最大の特徴は、ダッシュボードや計算ノード、ネットワーキングといったすべての機能にOSSを採用していることにある。特定のベンダーに依存せず、レッドハットがエンタープライズの領域で蓄積してきた信頼性や拡張性をクラウド環境でも利用できる。

 レッドハットは社を挙げてOpenStackに投資を続けることを表明しており、最新版の開発では最も貢献している企業だ。当社がOpenStackのコミュニティーで主導的な役割を果たすことで、エンタープライズの領域に必要な品質や機能を取り込めると考えている。

急拡大するOSSソリューション
●急拡大するOSSソリューション
[画像のクリックで拡大表示]

ICTインフラにとどまらず、ビジネスの領域でも使用

 OSSはOSやストレージ、仮想化環境といったICTインフラにとどまらず、ビジネスの領域でも使われている。ビッグデータを戦略情報に転換するインメモリー・データグリッド、ルールを効率向上に結びつけるBRMS(ビジネス・ルール・マネジメント・システム)、プロセスを結果に直結させるBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)といったソリューションにも対応する。それに歩調を合わせ、OSSはICTを基盤に人と人、ビジネスとビジネス、人とビジネスをつなぎ、社会のイノベーションも支えている。レッドハットの役割は「OSSをエンタープライズの領域でも使えるように水準を高め、OSSをICTの主流に導くこと」である。レッドハットは今後も性能、機能、品質などの検証を徹底し、ミッションクリティカルな製品に仕上げていく。

 レッドハットは2002年にエンタープライズ版のLinuxを市場に投入して以来、企業や官公庁の要望をコミュニティーに伝え、それを反映させた。そしてパートナーとともに最適なICTソリューションに仕上げ、企業や官公庁に提供してきた。顧客、コミュニティー、パートナー、当社の“四位一体”を一段と加速する。

 レッドハットは過去11年間、45四半期連続で増収を続けている。これは当社による価値創造の加速が続き、世界のICT市場の成長に貢献している証しと自負している。今後もOSSのリーディングカンパニーとして、日本のICT市場の活性化と企業の成長に役立ちたい。