今後20年間で世界人口は80億人を突破し、中間層は6割超にあたる50億人に達するといわれている。消費が拡大すれば、資源やエネルギーの最適利用は一段と重要になる。また、情報化の進展にも目覚ましいものがある。ネット対応機器の普及台数は2013年に150億台を突破し、近いうちにモバイル端末の普及台数は世界人口を超える。いつでもどこでも情報にアクセスできるため、時間と地域の格差はなくなりつつある。

 こうした変化により、かつてないほど個人の力は強まっている。将来像を再考し、個人に焦点を当てたビジネスモデルに変えなければ企業の成長は期待できない。それに欠かせないのは構想力と実行力である。

 構想力は、常識に縛られず、顧客が望むものを把握し、デザインシンキングでビジネスを展開すること。実行力はその構想力を形にする力。新たなアプローチやテクノロジーによって、デザインしたビジネスを迅速に世に送り出す。

 SAPはERPベンダーとして知られているが、構想力と実行力を支援する数々のソリューションを用意する。膨大なデータを蓄積・整理するデータベース技術、それを武器に変えるアプリケーションやアナリティクス、多彩なデバイスに対応したモバイルソリューションやクラウドサービスなどだ。そして、これらの数々のソリューションのポテンシャルを飛躍的に高められるのがSAP HANAである。

数日間要した分析処理を、数分から数十分に短縮

SAPジャパン 代表取締役社長 安斎 富太郎 氏
SAPジャパン
代表取締役社長
安斎 富太郎 氏

 SAP HANAは強力な演算エンジンとデータベースの統合により、サーバーのメインメモリー上でリアルタイムに演算処理を実行し、大量データをリアルタイムに分析・把握する情報活用基盤の構築に向く。これまで数日間要していた高度な分析処理も数秒から数分、数十分程度に短縮できる。

 SAP HANAをはじめ数々のソリューションの活用で、リソースの最適化、ビッグデータの有効活用、リアルタイムビジネスの実現は容易だ。それにより、ビジネスや社会は大きく変革できる。

 リソースの最適化の好例が欧州のポンプ製造会社のケースだ。SAPのソリューションを活用し、ポンプに設置したセンサーデータを分析する基盤を構築した。それを発展途上国に導入し、故障を未然に防ぐ予防保守と、位置情報によるポンプの最適配置を実現した。その結果、10万人に安全な水を供給でき、 水による感染症の死亡者が5割減った国もある。

 リソースの最適化は電力会社でも成功している。欧州の大手電力会社はスマートメーターのデータを蓄積・分析することで契約者の消費傾向を把握し、料金の安い時間帯の利用を提案した。それにより、契約者の電気料金を削減し、電力消費のピークをシフトしたことで電力を一段と安定供給できるようになった。

成長を生み出す構想力と実行力
●成長を生み出す構想力と実行力
[画像のクリックで拡大表示]

膨大なデータの分析・予測で、航空機の運用精度も向上

 ビッグデータの有効活用では、欧州の大手航空会社の事例が挙げられる。機体の検査・整備、品質管理、在庫、インシデント追跡システムなどのデータを統合し、その分析にSAPのソリューションを活用する。膨大なデータを分析・予測することで、故障の発生前に機体を整備できるようになった。事故の未然防止だけでなく、機体の運用精度も高まった。

 リアルタイムビジネスの実現では、SAPが北米の都市交通局と進めているプロジェクトが好例だ。利用者の位置情報をもとに、駅の周辺にある100軒を超える小売店や飲食店などから近くにいる利用者のスマートフォンにタイムセールやキャンペーンの案内を配信する。公共交通機関の利用と、購買を促進することで、相乗効果による収益拡大を狙っている。

 日本にも成功事例はある。高いレベルのセキュリティ確保と、タブレットの管理効率化を狙い、大手金融機関はSAPのMDM(モバイルデバイス管理)を導入した。タブレットをリテール営業担当者に配布したことで、投資信託や保険商品などの取扱商品が増加しても、これまで以上に詳しい商品説明ができるようになり、商品販売の増加や顧客との関係強化につながった。

 個人に焦点を当てたビジネスモデルを変革するには、個人が抱いている欲求や要求を正確にとらえ、目の前にある制約を取り払って自由に発想するデザインシンキングが欠かせない。それには思いやりやおもてなしの心に通じるものがある。

 思いやりやおもてなしに長けた日本人にとって、本来、デザインシンキングは得意なものだ。日本企業のイノベーション創出のポテンシャルは高い。SAPは数々のソリューションを通して、日本企業の変革と成功に役立ちたい。