IPA(情報処理推進機構)では、ソフトウエア開発の品質向上を目的として開発・運用プロセスをまとめた「共通フレーム」を作り、随時改訂してきた。2007年公開の「共通フレーム2007」では「超上流」を強化した。これが浸透して、システム化企画や要件定義をきちんとやるのが当たり前になった。

 ところがここ何年かは、別の問題が浮き彫りになってきた。最終的な運用、つまりシステムの利用を想定した要求品質が曖昧という問題だ。要件通りにシステムが動いても、稼働後に本当に役立つものになっていないのだ。これが、2013年3月公開の「共通フレーム2013」で、運用のプロセスを大きく見直した理由だ。

情報処理推進機構 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター リサーチフェロー 村上 憲稔氏
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 運用における問題は、利用シナリオの想定不足によるものだ。システムを実際に利用する業務担当者やオペレーターがどう関わるのか、例えばシステムが止まったときに業務担当者がどのようにカバーするのか、といったシナリオができていない。システムの問題としてだけではなく、業務全体から見た運用を考えないとうまくいかない。

 そこで共通フレーム2013では、業務運営とITの関係の全体像を明確にすることに注力した。従来の共通フレームが重視してきた「ソフトウエア」「システム」に加えて、「業務」「経営(ビジネス)」を併せた四つの関係を模式化して、「運用を見据えた開発」のプロセスを示した。

問題解決プロセスにつなげる

 そして共通フレームの定義では、例えば企業のシステム化企画のプロセスに、運用の概念も含める。開発するシステムの運用計画を立てるだけではだめで、既存のシステムを含め、企業全体の業務運営の視点で運用を考えることが不可欠だ。

 運用のプロセスにも、例えば問題解決への引き継ぎというプロセスが加わった。問題解決には、システムの要件に問題があれば要件定義からやり直す、システム構成が問題なら方式設計からやり直す、といったプロセスがある。共通化フレーム2013では、運用側からこの問題解決プロセスにつなぐプロセスを定義した。

 これらのプロセスの全体を通じて、運用から始まって、業務改革、開発、そしてまた運用に戻るという継続的なサイクルを実現する。

 運用を起点としたこのサイクルでは、ユーザー企業側のオーナーシップがより重要になる。従来は開発のところをうまく切り出して開発ベンダーに任せることがオーナーシップだと思っていたかもしれない。だが今後は、経営者も業務部門もシステム部門も深く関わって、業務運営の部分まで含めてオーナーシップを発揮しなければならない。

 運用担当者は、運用が経営に役立つという意識を持つことが大事だ。システムの改善に対するニーズの源泉は運用の現場にあるからだ。(談)