情報システムの運用は以前「縁の下の力持ち」の存在で、開発から渡されたシステムをそのまま運用するという立場だったかもしれない。しかし今はそれでは立ちいかない。

 システムが複雑化し技術も多岐にわたる上、24時間365日の運用が求められる。当社で情報システムを担当する人員は、10年前の3分の1に減っている。限られた人員でやっていくには、運用と開発が一体になって運用品質を高めていくしかない。

大成建設 社長室 情報企画部長/大成情報システム 代表取締役社長 柄 登志彦氏
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 それを可能にするのが、プロセス標準だ。当社は数年前に、ITILやCOBITを採用して開発から運用までのプロセス標準を作った。その中のインシデント管理の仕組みを使って運用と開発が情報を共有し、開発の段階で運用品質を高めている。利用部門からのデータメンテナンスの依頼、トラブル対応など、あらゆる情報をインシデントとして管理し、それらを開発に生かす。

 インシデント管理の仕組みが軌道に乗るには数年かかったが、ここ1、2年で定着してきた。

 もちろん、プロセス標準があればよいわけではない。運用が開発にモノを言うにはパワーがいる。「運用のここがおかしいから変えてほしい」と能動的に提案できるリーダーが必要だ。それを実践できる人が中心となり、開発との関係を変えてきた。2010年から運用と開発の人材ローテーションを実施しており、これも運用が意識的に開発に対して声を上げる効果につながっている。

利用部門説得し根本対策

 2012度は、長年の課題掘り起こしも実施した。暫定的な対処でしのいできた問題への取り組みだ。

 情報システムの運用では、問題が起こると「運用で対処してほしい」という議論になりがちだ。そして根本原因を正さなくても、業務に支障がなければ利用部門は困らない。これを放っておけば、毎回同じ問題、同じ対処を繰り返すことになる。  そうした項目を洗い出し、根本原因をなくす予防保守の取り組みは、運用主導でしかできない。コストを負担する利用部門を説得するのは容易ではないが、これも運用部門のリーダーの重要な仕事だ。

 求められる高度な運用品質を少ない人員で達成するためには、いかにアウトソーシングできる領域を増やしていけるかも大きな課題だ。

 ただし外部に託すにしても、社内の人員による判断や指示が必要な領域は少なくない。例えばメールシステムなどは、障害対応をルール化しておけば完全にアウトソーシング可能である。問題なのは、そうしたルールを決めにくい運用プロセスだ。業務アプリケーションは業務の状況に応じて対応が変わることが多く、完全なアウトソーシングは難しい。

 今後は、完全にアウトソーシングできる領域をベンダーと連携して見極め、その範囲を広げていく。(談)