日本ユニシスと大日本印刷は2012年8月9日、業務提携を結んだ。システムインテグレーターと印刷会社による異業種提携ということで注目を集めた。それから10カ月たち、私が強く感じていることは同業の企業が提携すると守りに入りがちだが、異業種提携は相乗効果を発揮することだ。

 両社は(1)サービス事業基盤の強化、(2)マーケティング・販売連携、(3)マーケティング向けサービスやコンテンツの共同開発、(4)グローバル展開――の4分野で業務提携を進めているが、双方の強みを相互に発揮し、目に見える成果が表れている。

 次世代に向けたサービス事業基盤の強化はその好例だ。国内に3カ所ある大日本印刷のDNPデータセンターと、国内7カ所にある日本ユニシスデータセンターの間で運用・保守・コールセンターの業務を統合・連携し、国内最大級のITサービス網を構築する。大日本印刷が今年11月、千葉県に開設する予定の次世代データセンターもこのサービス網に参加する。

ベースはユニシスのU-Cloud、稼働の安定性で金融機関も採用

日本ユニシス 代表取締役 上席専務執行役員 角 泰志 氏
日本ユニシス
代表取締役 上席専務執行役員
角 泰志 氏

 このサービス基盤のベースとなっているのは、日本ユニシスが2008年10月から運用しているクラウドサービスU-Cloudである。このクラウドは可用性はもちろん、信頼性も高いため金融業をはじめ製造業、流通業などのミッションクリティカルシステムにも広く使われている。サービスを開始してから5年たつが、稼働の安定性では他の追随を許さないと自負している。

 業務提携による成果はこれだけではない。業務提携によって両社の得意分野を組み合わせた様々なソリューションが生まれている。1日1件のペースで新規案件の報告メールが届き、300件を超える商談が進行中だ。大日本印刷の電子帳票プリントBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)と日本ユニシスの基幹システムを組み合わせたソリューションはその1つ。事務データの生成、通知物の印刷・発送代行、電子帳票、受け付け・問い合わせなどのBPO業務をワンストップで提供する。美術館やショールーム、小売店などに大日本印刷が提供する空間メディアサービス用のマルチメディア機器を日本ユニシスが調達から導入、運用保守、撤去までを手掛けるサービスも始まっている。

 消費者に一段と近いソリューションとして、大日本印刷の商品データベース・商品情報管理と日本ユニシスのグローバルWebコンテンツ管理を組み合わせたものがある。最大の特徴は正確な商品情報を適切な場所に適切なタイミングで送出することにある。それにより、商品ブランドのプロモーション効果を確実に高めることができる。

 こうした取り組みを通して日本ユニシスと大日本印刷はサスティナブル・カスタマーバリュー(持続的な顧客価値)の提供に力を入れる方針だ。

 あえてサスティナブル(持続的)を掲げたのは、特定シーンだけでの付加価値の提供で終わりたくないからだ。戦略の立案から始まり、リサーチ、ブランディング・見込顧客獲得、販売促進、購買、アフターサービス・分析という一連のサイクルでお客様の成長につながる価値を提供する。それは、日本ユニシスのノウハウと、大日本印刷のノウハウの連携によって生まれる相乗効果によって初めて実現できる。

異業種提携で新事業・新サービスを創出
●異業種提携で新事業・新サービスを創出
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成長領域はマーケティング、ICT活用の検討機会が増加

 ICT(情報通信技術)の今後の成長領域はマーケティングにある。これは日本ユニシスと大日本印刷との共通認識だ。クラウド化、ビッグデータの活用、コミュニケーション手段の多様化などにより、ITインフラの整備や基幹系システムの開発・運用を担当する情報システム部門よりもモバイルや電子決済などを扱うマーケティング部門のほうがICTの活用を考える機会が増えるだろう。

 現在共同開発を進めているマーケティングプラットフォームは、データ分析を核としたモバイル・スマートフォン、デジタルコマース、次世代ペイメントなどだ。その整備で、オンライン・ツー・オフライン(O2O)や電子商取引(EC)の市場にも確かな足掛かりを築けるだろう。

 企業が永続的に成長するには、生活者の声に耳を傾け、高品質の製品とサービスの提供で、それに応えなければならない。異業種連携による共創ビジネスには、そうした永続的成長を可能にする力があると確信している。