クラウドサービスは短期間にシステムを構築でき、事業環境の変化に柔軟に対応する。先日、セールスフォース・ドットコムのクラウドサービスは中小企業庁が推進している中小企業の支援事業に採用された。この事業は弁護士や税理士、コンサルタントといった専門家と、中小企業の橋渡しをするもの。3年間で全国の企業100万社、専門家1万人の参加を目指し、企業間連携のほか、国と自治体からの情報提供を推進する。クラウドサービスの特徴を最大限に生かし、短期間でポータルサイトを立ち上げ、規模を拡張していく。

 情報システムを構築する際、これだけは最低限実現したいという機能がある。クラウドサービスを使えば、まずはその機能をサービス上に実装し、情報システムとして稼働させればよい。すると、「この機能が欲しい」「あの機能が足りない」ということが浮かび上がってくるので、不足していた機能を順次追加していく。あらかじめ必要な機能を把握していても実装に時間がかかるのでは意味はない。クラウドサービスの利用で、実装時間の問題は解決する。自由自在に拡張でき、どのような規模にも対応するので、巨額な先行投資も不要だ。

7力月で巨大システムを構築、問い合わせ570万件にも対応

セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 宇陀 栄次 氏
セールスフォース・ドットコム
代表取締役社長
宇陀 栄次 氏

 昨年11月の米国オバマ大統領の再選キャンペーンは、このメリットをフルに活用した。有権者からの大量の問い合わせを登録・処理するため、当社のクラウドサービスを活用した。当初、情報システム担当者が「何をやらないといけないのか分からず、途方に暮れていた」という状態だったが、わずか7カ月で大企業並みの情報システムを構築した。

 当社のクラウドサービスによる効果はそれだけではない。寄せられた問い合わせは570万件。それをすべて登録した。中には、「どうせ読まないでしょう」と書かれたメールもあったが、埋もれがちな声を拾い上げることができたという。

 選挙対策本部の担当者は「国民の意見をリアルタイムに見ることができた。ある地域の人の発信が気になったら、郵便番号を入力するだけで、その地域に住んでいる大勢の人のメールが並ぶ。選挙では数千の選挙区にいる有権者一人ひとりとの対話が大切だが、すべての有権者に向き合えたと思う」と振り返る。

 埋もれがちな声を丹念に聞き取ることは選挙だけでなく、企業経営にも重要だ。インターネット上で情報を発信・共有してつながり、知識を共有する消費者は、発言の自由、選択の自由を持つ。商品やサービスに対する情報を自由に発信でき、彼らの期待に企業が応えなければ、すぐに別の企業に乗り換え、悪い評判が瞬く間に広がる。こうした消費者が増えたことで、企業はカスタマー革命に直面している。

力スタマー革命:テクノロジーを活用してお客様とつながる
●力スタマー革命:テクノロジーを活用してお客様とつながる
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 カスタマー革命は、表現を変えればお客様志向にほかならない。日本企業はもともとお客様志向に力を入れてきた。しかし、日本企業がこれまで進めてきたお客様志向はどちらかといえば精神的なものだった。これからは具体的な技術を使って顧客との関係を強化することが求められている。

顧客と1対1の関係を築き、サービスによる収益が向上

 カスタマー革命には、ソーシャルメディアの活用で顧客との関係を築くソーシャル革命、あらゆる場所から顧客にアクセスできるモバイル革命、顧客の本質的・潜在的ニーズを見つけ出すビッグデータ革命、顧客やパートナーとの間で情報共有を実現するコミュニティー革命、あらゆる企業がモバイルアプリケーションを開発して顧客や社員、パートナーをつなぐアプリケーション革命、ITを所有から利用に変えるクラウド革命、顧客の信頼を獲得し、顧客のプライバシーやID情報、資産を保護するトラスト革命という7つの要素が欠かせない。

 日本企業の中にも、カスタマー革命に対応した会社がある。国産車ディーラーでいち早く当社のクラウドサービスを採用したトヨタカローラ徳島はその1社だ。以前、自動車販売業界では新車販売が収益源だったが、最近はメンテナンスなどのサービスの比率が高まり、顧客一人ひとりに密着する仕組みが求められる。トヨタカローラ徳島は来店から提案、販売、納車といった営業活動に加え、販売後のサポートから買い替えに至るライフサイクル全体を当社のクラウドサービスにより見える化し、顧客と1対1の関係を築くことに成功した。

 セールスフォース・ドットコムは具体的な技術を使って、カスタマー革命に欠かせない7つの要素を実現するソリューションを用意する。7つの要素を取り入れ、顧客と信頼を得たカスタマーカンパニーになることは今後の企業が生き残るための条件だ。そのお手伝いをしていきたい。