ユーザー数が数億人単位のクラウドサービスでは、機能を一つ追加するだけでも、数千台のサーバーが必要になることがある。このような場合でも、ほんのわずかな期間で、必要なサーバーを増設できるデータセンター(DC)がある。米イーベイが2011年末にユタ州トパーズ市に開設した「トパーズDC」だ。

 トパーズDCの特徴は、サーバーなどを設置する通常のDCビルの屋上に、コンテナ型DC(写真1)を設置できるスペースを設けたことだ。コンテナ型DCは、イーベイとデルが共同開発したもので、一つのコンテナの中にサーバーを最大1500台収納できる。サーバーはあらかじめデルの工場でコンテナ型DCの中に据え付け、サーバーを搭載した状態でトレーラーを使ってトパーズDCまで運ぶ。

写真1●米イーベイの「トパーズ・データセンター」
写真1●米イーベイの「トパーズ・データセンター」
米デルが開発したモジュール型データセンターを使用する
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 コンテナ型DCをトレーラーから降ろして、トパーズDCの屋上に据え付けるまでにかかる時間はわずか10分だ。既設のラックにサーバーを据え付けていくという従来型のサーバー増設方法に比べて、サーバー増設にかかる時間を大幅に短縮できる。

 トパーズDCでは、必要となるサーバー台数が1000台を上回る場合に、コンテナ型DCを使って、サーバーを一気に増設する。必要なサーバー台数が1000台を下回る場合は、工場で1台のラックにつき最大96台のサーバーを据え付け、そのラックをそのまま輸送して据え付けるという「ラック・アンド・ロール」と呼ぶサーバー増設方式を採用している。

水温30度でもサーバーを冷却

 トパーズDCは、真夏には昼間の気温が48度に達するという砂漠に位置する。しかし同DCのPUEは「1.2」未満に収まっている。これは、「ホット・ウオーター・クーリング(温水冷却)」と呼ぶ水冷型の冷却方式を採用しているからだ。

 この方式では、サーバーの冷却に、コンテナ型DCや各ラックが備える水冷式の冷却装置を使用する。またサーバーは、室温が最大36度でも安定稼働できるものだけを使用している。そのため、トパーズDCでは、水温30度以下の水があれば、水冷方式でサーバーを稼働可能な温度に保てる。こうして、冷却水を冷やす電力を大幅に削減している。

 トパーズDCでは、サーバーを確実に冷ます水冷方式を採用することで、1ラック当たり最大40キロワットのサーバーを稼働可能にもしている。

 日本の一般的なDCでは、1ラック当たりの消費電力は4キロワット程度だ。つまりトパーズDCでは、日本のDCに比べてラック当たりの消費電力が10倍大きいため、ラック当たりのサーバー密度も日本に比べて10倍大きくできることになる。