今夏、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを舞台に、企業が炎上トラブルに巻き込まれる事件が相次いだ。大手外食チェーンやコンビニエンスストアのアルバイト店員や来店客が、お店の食材や冷蔵庫などの備品にいたずらした画像をSNSに投稿したことで、その企業にクレームが殺到するといった騒ぎが起きたのだ。

 当事者となった企業の多くは、Webなどでお詫びのメッセージを公表するとともに、問題の画像を投稿したアルバイト店員や来店客への損害賠償請求も検討するという厳しい姿勢を見せている。

 ITproの人気連載「SNSと企業の一歩進んだ付き合い方講座」では今週、この炎上事件をテーマとする記事を公開した。

 著者の熊村氏は、今夏の炎上事件について「従来のソーシャルメディアポリシーやソーシャルメディアガイドラインの策定だけでは防ぎきれないことを認識しておく必要がある」と指摘する。社内のコンプライアンスをいくら厳しくしても、短期間で入れ替わるアルバイト店員、まして来店客に守らせることはできない。結果として、企業は「とばっちり」を受ける格好で、簡単に炎上に巻き込まれるようになった。

 ソーシャルメディア“炎上”対策の研修サービスを提供するトライバルメディアハウスの川久保潤三氏も、先週公開されたインタビューの中で「入れ替わりの激しいアルバイトの教育に、あまりコストを掛けられないという事情もある」として、アルバイト店員への教育には限界があることを認めている。

 では、どうすれば良いのか。熊村氏は“炎上”をいち早く察知して、企業として的確な対応を取れる体制を作ることが重要だとする。

事前のモニタリングが迅速な対応を可能にする

 例えば、ガイアックスでは飲食店や小売業向けにソーシャルメディアの“炎上”の火種を早期に発見する「苦情報告サービス」を提供している。同社の池谷昌大氏は、「大きな炎上の前には、必ず危うい事例が数多く存在している」という。そこで、事前のモニタリングで得られたデータからあらかじめ対策を講じておけば、実際に炎上が発生した場合に迅速な対処が可能になるという。

 もちろん、事前の教育がまったく無意味というわけではない。ソーシャルメディアを日常的に使いこなしていても、情報を発信することの危うさに無自覚な若者は少なくない。ソーシャルメディアの炎上問題に詳しい特定社会保険労務士の専田晋一氏は、炎上による企業のブランド価値低下を防ぐために「すべての人間がSNSを利用しているという前提で雇用契約を結び直したり誓約書を取ったり」した上で、ソーシャルメディアの利用に関したガイドライン作成の必要性を力説する。