Windows XPの代表的なデスクトップ画面
Windows XPの代表的なデスクトップ画面
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 テレビのニュースやドキュメンタリーなどで、有識者のコメントが紹介されるシーンを見ると、今なお、研究室や役所などで驚くほど多くのWindows XPが使われていることに気がつく。XPは、タイトルバーの色が派手なのでチラッと見ただけでもすぐにわかるのだ。もちろん、あの草原の壁紙が使われているケースも少なくなく、本当にすぐにわかる。

 これらの現場は、予算なども厳しく、なかなか最新の機材を購入できないという事情もあるのかもしれない。だが、パソコンの減価償却は4年だし、リースによる運用も少なくないはずで、XPを使い続けているのには別の理由があるはずだ。

ユーザーが混乱することを言い訳にしてはいないだろうか?

 この記事を読んでくださっている読者の方は、企業などにおいて、ITを管理する立場にある方が多いと思う。管理する立場からすれば、問題なく動いているものを変えることこそ、ある種の恐怖を感じているかもしれない。その免罪符はユーザーの混乱だ。でも、誤解を怖れずに書けば、やはり、そうしてエンドユーザーに古い環境を使わせ続けることは、その生産性や効率の点で、けっこうなストレスを与えることでもあることを考えた方がいい。

 以前、取材で、各種学校の現場を取材したことがあるが、そのときの担当者の言葉は、学生にできるだけ最新の環境を与えることが重要だというものだった。なぜなら、学生時代は数年で終わり、彼らは社会に出て行く。その数年の間にIT事情は変化するので、古い環境に固執していては、彼らが学生時代に会得したスキルを生かせなくなってしまうからだというのだ。

 だが、せっかくの配慮も、これだけXPが長く使われ続けてしまってはもともこもない。確かにパソコンは道具であって、パソコンそのものが目的にはなりえない。だが、システム管理者がちょっとでもラクをするために、エンドユーザーの創意工夫や向上心を阻害してしまうというのは、何か違うと思うのだ。ずっと、Windows XPを使い続けてきたということは、ある意味でそういうことではないだろうか。

 Windows XP終了まであと29週。

山田 祥平(やまだ しょうへい)
フリーランスライター
1980年代、NEC PC-9800シリーズ全盛のころからパーソナルコンピューティング関連について積極的に各紙誌に寄稿。Twitterアカウントは @syohei