「ドコモのiPhoneがどうなるか。それはこれまでauがやってきたことを見れば分かりますよね。『auスマートパス』もiPhoneで使えます。音楽再生アプリの『LISMO』もiPhoneで使えます。こうした先例があります」。野村證券 エクイティ・リサーチ部 デピュティ・ヘッド 日本通信リサーチ マネージング・ディレクターの増野大作氏は、KDDI(au)という先行事例を見れば、ドコモのiPhoneがどうなっていくかが分かると指摘する。auのiPhoneは、ドコモのiPhone導入のいわば“露払い”だったとも言える。

 ドコモは同社が展開する各種サービスのマルチキャリア化、マルチプラットフォーム化を進めていた(関連記事:dマーケットはマルチキャリアへ、まずは個別課金系サービスから対応する)。当初からiPhone導入を想定していたかどうかは現時点では不明だが、結果的に同社のiPhone導入においても自社サービスの迅速な展開が可能になったといえる。spモードメールやメッセージR/同Sは10月1日から、dマーケット関連は、dアニメストアとdミュージック(月額コース)が多少遅れるものの、dゲームやdビデオなど大部分のdマーケット関連サービスは10月中には提供を開始する予定である。

 いずれにせよドコモのiPhone導入で、KDDI、ソフトバンクモバイルの大手3社が同じ端末を扱うことになり、これまでMNPにおいて“草刈り場”と化していたドコモも、KDDI、ソフトバンクモバイルとiPhoneの取扱いという点において同じ土俵に立つことになる。野村證券の増野氏にドコモのiPhone導入後の変化について聞いた。


ドコモは様々なサービスも自ら手掛けています。

野村證券 エクイティ・リサーチ部 デピュティ・ヘッド 日本通信リサーチ マネージング・ディレクター 増野大作氏
野村證券 エクイティ・リサーチ部 デピュティ・ヘッド 日本通信リサーチ マネージング・ディレクター 増野大作氏

 iPhoneはAndroidよりも自由度は低いですから、自由度を広げる交渉をしていくほかない、というのがここ1年のKDDI。ドコモの各種サービスがどうなるかはKDDIと同じだと考えればシンプルな話です。KDDIではiPhoneでも「auスマートパス」を入れて、音楽再生アプリの「LISMO」も使えるようにしました。単純にauと同じようになっていくだけだと思います。

ある意味、KDDIがドコモのiPhone導入の露払いになった。

 KDDIは情熱を持ってauスマートパスの導入をアップルに認めてもらって、それ以降も様々なサービスをiPhoneで使えるようにしてきています。交渉ごとなので、熱意がない人には開かれない。すべてはKDDI次第、ドコモ次第だということだと思います。

端末メーカーにはどのような変化があるのでしょうか。

 単純にドコモのiPhoneが売れる分だけ他メーカーの売上が減るとなると、がんばらないメーカーは脱落していく。メーカー数は限られてきますよね。ただ日本は競争条件が他国と違う点もあります。米国では例えばiPhoneが199ドル、Androidのハイエンド機も199ドルと同じ値段で売られている。一方日本はiPhoneが安く売られている。例えば原価が4万5000円のAndroid端末が2万円で売られ、それより原価の高いiPhoneが実質ゼロ円といった売られ方をしている。

 iPhoneは年末までに全世界で270の事業者が扱います。Androidの端末を作るメーカーも、取り扱ってもらえる携帯電話事業者を増やす努力をしなければならないでしょう。実際、日本でも富士通のARROWSシリーズやシャープのAQUOS PHONEシリーズは3事業者から販売されています。

 一方で携帯電話事業者からしても、どこでもiPhoneを売っているんだったら、Android端末も売らないと見栄えが悪い。そうすると、結果的にどこに行っても同じ端末を売っている世界に近づく。例えば米国ではベライゾンに行っても、AT&Tに行っても、同じ端末が並んでいるわけです。自然に日本でもそういった世界に収れんしていくと思います。半年後は分からないですけど、2年もすればそうなるのではないでしょうか。