世界中で使われている検索エンジン「Apache Lucene/Solr」。そのコミッターである関口宏司氏は、検索とOSSで起業しようとしてロンウイットを設立した。関口氏を含めた3人の技術者はいずれもApacheのプロジェクトのコミッターだ。

(聞き手は高橋 信頼=ITpro


関口宏司氏

コミッターになった経緯は。

 これからは検索とオープンソースが重要になると考え、その2つをコアとする会社を作ったことが背景にあります。2006年にロンウイットを設立。最も優れたOSSの検索エンジンであると感じたLuceneと、Luceneをコアとする検索アプリケーションであるSolrを企業システムに導入するコンサルティングなどを手掛けました。不具合の修正や足りない機能の追加をコミュニティーに投稿しているうちに、コミュニティーのリーダーであるErik Hatcher氏に推薦されリーダーになりました。

 またLuceneでも2009年、Mike McCandless氏に推薦され、Lucene contribのコミッターに就任しました。

 そのうちに、2010年にLuceneとSolrが合流し、1つのプロジェクトになりました。Lucene/Solrプロジェクトでは、Grant Ingersoll氏の推薦で、Lucene/Solrのプロジェクトマネジメントコミッティーのメンバーになっています。

貢献の内容は。

 Solrプロジェクトでは、キャッシュ周りを改善したり、メーリングリストで質問に答えるサポートを買って出たりしていました。Luceneでは、日本語を正しく扱えるようにするため、「CharFilter」フレームワークや「FastVectorHighlighter」を開発しました。

 日本語では、半角カナでは濁音や半濁音を2文字で表しますが、CharFilterはそのような場合でも、文字を本来の位置に補正するためのフレームワークです。日本語だけではなく、ドイツ語などヨーロッパの言語を扱う際にも使われています。日本語形態素解析器にCharFilterを組み合わせることで辞書引きが正しく行えます。

 FastVectorHighlighterは、検索したワードをCJK文字などでハイライト表示する際に役立つ機能です。

Lucene/Solrの体制は。

 コミッターは全員で38人います。自分の担当分野をそれぞれがゆるく管理しています。ほとんどの意思決定は投票で行われており、メーカーの開発体制とは違い民主的だと感じます。

コミッターになったことで経営への影響は。

 ロンウイットの技術者は私を含め、3人いますが、全員がコミッターなんです。私はLucene/Solrのコミッター、他の2人は情報を収集するクローラーApache ManifoldCFのコミッターです。

 実はロンウイットには、コミッター就任時に祝い金20万円、コミッター手当として月々2万円を支給する制度があるんです。制度を作ったら社員が張り切って、2人ともコミッターになりました(笑)。

 それだけのビジネス上のメリットは間違いなくあります。コミュニティー活動をしていることで、ロンウイットのサービスや製品に対する信頼が高まっていると思います。これまで、130社以上へLucene/Solr導入をお手伝いしてきました。トレーニングを受講していただいた方は200社300人以上に上ります。また、Apache Solrのサブスクリプションパッケージを開発し、提供しています。

 顧客にもメリットがあります。FastVectorHighlighterはある顧客の案件で必要となったものなのですが、コミュニティーに寄贈することを前提で開発しました。本体に取り込んでもらうことで、バージョンが上がってもメンテナンスされます。顧客もそのことを理解し、寄贈に積極的に賛成してくれました。