老化した会社を根本的に解決するには「リセット」しかありません。その手段として「子会社」を使うのも有効な手段と言えるでしょう。新しい事業を始める場合の「インキュベーション」(孵化)の手段としては多くの会社で有効に機能している「子会社」の仕組みですが、なぜか「世代交代」とはいかない場合がほとんどです。人間では当たり前の親子の世代交代がなぜ「会社の親子」ではうまく行かないのでしょうか。

「インキュベーション」としての子会社

 老化した会社の数々の老化現象(ルールが増えたり、セクショナリズムが進行したりすること)をリセットするには「置き換える」ことが重要であるというのが前回の要旨でした。新しいプロジェクトは別組織で行うといったことや、従来と異なる特性を持つ事業は、意思決定の仕組みやルールを作り直した新しい事業部で取り組むといった方法がありますが、それよりもさらに有効な方法、それが子会社を使うということです。

 日本の大企業には数百という子会社が存在します。そのうちの何割かがまさにこうしたミッションを担っており、新しい事業を「別の器で」スタートするために子会社が設けられます。歴史のある「本業」とは異なる新規事業を育てる仕組みとしては有効に機能している仕組みといえます。

 ところが残念ながら、ある程度のところまでは成長できても、完全に独り立ちし、「既存事業を置き換える」ところまで進む子会社の事業は非常に少数派です。ここがうまくいけば、本連載で言っている「老化のリセット」が図れるわけですが、実際にはある程度の規模になるとまた「親会社に吸収される」などの形で「薄まって」しまい、「置き換える」形にならない場合がほとんどと言えます。これはなぜなのでしょうか?

「老いては子に従え」は人間だけ?

 「老いては子に従え」ということわざがあります。まさに「老化」が進んだ親はあまり子供に口出しせずに、子供のやり方に任せるべきであるという戒めは人間にはよく言われます。これが、こと「親会社」と「子会社」との関係に関してはあまり語られることはありません。