友達とおしっこの勢いを競ったり、真っ白い雪の上におしっこで文字を書いたり。男性なら誰でも一度は経験したことがある子供時代の遊びをそのままゲームにした、ユニークな機器がある。その名は「トイレッツ」。セガが2011年11月に発売したデジタル・サイネージである。
男性は小用の際、便器の前に1~2分間立ち続ける。この性質を利用し、便器の上に液晶ディスプレイを設置して、その画面上にさまざまな情報を提示する。トイレッツの優れた点は、トイレという特殊な空間にゲームを持ち込むと共に、ユーザーの競争心やゲームを楽しみたい心理を巧みに刺激することで、高い広告効果を期待できる点にある。
例えば対戦ゲームでは、尿の放出速度や量の多寡を競う。居酒屋に設置する場合は、ゲーム中やゲーム終了直後の結果画面内に、「生ビール、今なら5割引」などの情報を提示する。ゲームに敗れたユーザーはこれを見て、「よし、次はこれを飲んで勝とう」と飲み物を注文してしまうわけだ。
実際、ある居酒屋でトイレッツを試験運用したところ、紙のポスターで宣伝する場合と比較して、飲み物の1週間の注文数が一気に2.2倍に伸びたという。この高い広告効果に着目し、居酒屋チェーンなどを展開する養老乃瀧は、トイレッツの発売に先駆けて2011年10月から順次、同社の約40店舗に先行設置した。
今でこそ、こうした成果を堂々と語れるようになったが、開発の中心メンバーである町田裕孝は「苦労の連続だった」と、その経緯を振り返る。トイレッツ誕生のきっかけは約5年前。その場所は、やはりトイレだった。