国民一人ひとりに割り当てる固有の識別番号によって、社会保障や納税を管理できるようにする「共通番号(マイナンバー)制度」がいよいよ始動する(図1)。政府は、この制度で行政サービスの利便性が向上するほか、公平・公正な税・社会保障負担の実現に不可欠だと訴えている。
ただし、長年にわたる議論を経て法案が成立した今も制度への賛否が交錯しており、一部では誤解に基づいた批判もある。同制度を支えるシステムを正しく理解するためにも、まずは制度の概要と基本的な考え方を整理する。
「一元管理」はしない
マイナンバー制度が始まると、国民一人ひとりに対し、原則として一生不変の「個人番号」が割り振られる。2016年1月以降、納税申告や年金、国民健康保険などの手続きには必ずこの個人番号が必要になる。基礎年金番号や国民健康保険の被保険者番号などに代えて利用するものだ。割り当てを受けるのは日本に住民票を持つ全ての居住民で、永住資格を持つ外国人などを含む。
個人番号は2015年秋に、市町村が通知カードを住民に郵送して知らせる。希望者には身元証明の機能も兼ねたICカード型の個人番号カードを発行する。
一部には誤解があるが、各省庁や自治体などで番号付きで管理している個人情報の全てを、政府が一カ所に集めたり、一括してひも付けたりすることはない。所得の情報は国税庁や地方税を徴収する地方自治体、年金記録は日本年金機構というように、これまで通り各行政機関が管理する(図2)。
大きく変わるのは、国の行政機関や自治体が相互に、必要な個人情報を照会し合うことだ。この情報連携により、業務が効率化し、行政サービスの質が向上すると期待されている。例えば、個人の所得情報や世帯情報などを適切に活用すれば、申請可能な諸手当や制度などを、国や自治体が該当する個人に直接通知できるようになる。これまでは考えられなかったプッシュ型の行政サービスだ。
こうした改革の効果などは、第2回の『目指すはプッシュ型行政』から詳しく解説する。