長い間、アプリマーケット上の懸案とされているのが、他のアプリをほぼそのまま模倣したアプリや、アダルトな要素を含むなど本来マーケット上に流通させてはいけない内容のものを、不正な手段で流通させる問題アプリだ。そうした問題アプリは、どのような形でマーケットに流通しているのだろうか。また、なぜ日本で問題アプリが増加傾向にあるのだろうか。その理由を分析する。

“パクリアプリ対策”のための無料化セールが話題に

 スマートフォンのアプリマーケットにおいて、他のアプリの内容を丸ごと模倣して提供したり、本来マーケットでは提供できない内容のアプリを、審査をすり抜けて提供したりするケースは、以前から問題視されており、今なお後を絶たない状況だ。

写真1●“パクリアプリ対策”として無料化セールが実施された「アイコンメモ」
写真1●“パクリアプリ対策”として無料化セールが実施された「アイコンメモ」
セール実施後、模倣アプリはApp Storeから削除されたようだ。
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 最近、そうした問題が顕在化し、マーケット界隈で大きな注目を集める出来事があった。それは、App Storeで配信されている「アイコンメモ」という有料アプリが、8月に無料セールを実施したことに端を発する(写真1)。

 このセールが注目を集めたのは、そのセールの実施理由だ。実際、アイコンメモの開発者のブログを参照すると、アイコンメモの内容をほぼそのまま模倣し、さらにサーバー側のソースコードもそのまま使用したアプリが、アイコンメモより高い価格で販売され、しかもオリジナルより売れている、と書かれていた。

 そうしたことから、模倣アプリをダウンロードしたユーザーに対し、オリジナルアプリへの移行を促す“パクリ撲滅”のキャンペーンとして、アイコンメモの無料化を実施したと公表している。そしてこのセール実施後、従来App Storeへ申し入れしても削除なされなかったとされる模倣アプリが、実際に削除されるに至っている。

 だが、このような要因で模倣アプリの問題が解決するケースは稀であり、現在も多くの模倣アプリや問題アプリがマーケット上に流通している。アプリをダウンロードするユーザーにとっては、何が問題で何が問題でないかを判別する手段はないため、問題アプリをそのままダウンロードしてしまうことも少なくないのが現状だ。

問題アプリはどのようにして流通するのか?

 では実際、問題アプリはどのような形でマーケットに現れ、マーケットやユーザーに対してどのような影響をもたらしているのだろうか。

 こうした動向に詳しいアプリの開発者などに取材すると、模倣アプリや問題アプリが急増したのは2011年頃からだという。その要因は、この頃からアプリマーケット自体が大きな注目を集め、利用者が増えるとともに、アプリの収益性が増加していったことだという。