新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)は2013年3月にタイに現地法人を新設し、アジアに進出する日系企業にクラウドサービスなどを提供している。タイ法人は、2011年12月に設立したシンガポール法人に続き、東南アジアでは2社目という位置づけだ。

写真●新日鉄住金ソリューションズアジアパシフィックの渡辺薦マネージングディレクター

 NSSOLの東南アジアでの顧客は製造業が中心だ。「親会社である新日鉄住金のシステムをアジアでも手掛けており、製造業の海外拠点のニーズを理解している」と、ITインフラソリューション事業本部営業本部営業企画部の遠藤竜也部長は述べる。シンガポールの現地法人、新日鉄住金ソリューションズアジアパシフィックの渡辺薦マネージングディレクターは「アジアで手掛ける案件のほぼ100%が日系企業向け。そのうち半分を新日鉄住金グループ向けが占める」と説明する(写真)。

 NSSOLは東南アジアでは、クラウドサービスに注力する。具体的には、IaaS(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)「absonne for Asia Pacific」と、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の「SaaS Suite@absonne」などだ。

 IaaSについては、シンガポールのデータセンター(DC)に仮想サーバーやミドルウエアといったITインフラを構築、ネットワーク経由で提供する。既に4社が利用している。SaaSについては、「海外進出の際にまず必要となるメールやスケジュール、オンラインストレージといった機能を提供している」(遠藤部長)。

 クラウドに注力するのは、システムインテグレーターとしての強みを生かせると考えているからだ。同社の最大の強みは、「データセンターを含むITインフラの設計・構築、アプリケーションの構築・保守、システム運用・サポート、性能設計・管理などを全て手掛けられること」(渡辺マネージングディレクター)。クラウドを構築・提供するのに必要な要素を全てカバーできるというわけだ。

 日系企業の東南アジア拠点は専任のIT担当者を置かないケースが多い。そうした企業が手軽に使えるという点でも、NSSOLはクラウドの需要があるとみている。

 一方で、専任のIT担当者を置き、現地独自のシステムを導入するところもある。そうした企業に対しては、ERP(統合基幹業務システム)パッケージの導入ビジネスを展開する。従来からの「Oracle E-Business Suite」のほか、2013年7月にはインフォアジャパンと提携。同社の「Infor SyteLine」も取り扱う。

 NSSOLの東南アジア事業の課題は、現地要員の増員だ。現時点では日本人を含めタイに約30人、シンガポールに10人前後の要員を抱えるが、「現地採用の要員だけでも最低70~80人、できれば100人体制を早急に確立したい」(渡辺マネージングディレクター)。ビジネス拡大のために、現地での採用活動を強化する考えだ。