海外市場にソフトやソリューションを売り込む場合、日本での実績やノウハウを基に、現地のニーズに即したものに仕上げるケースが多い。これに対して富士通は、海外で実績のある自社製品をベースにする。

 代表例が、タイのマクドナルドに納入した流通システムである。食材の注文から支払いまでを支える基幹系システムを導入し、タイのマクドナルドは調達スピードの向上と効率化を両立させた。

 このシステムは元々、富士通オーストラリアが同国のマクドナルド向けに構築・納入したものである。搭載機能がタイの要件に近かった。

 富士通の長野良海外ビジネスマネジメント本部長代理は、「当社の海外向けソリューションの選定は、必ずしも本社主導ではない。海外の子会社同士がピア・ツー・ピアで直接連携できる体制にしている」と語る。「日本で開発したシステムは独自機能を搭載している場合が多く、海外展開が容易ではない」とも述べる。日本のシステムよりも、海外で実績があるシステムを横展開した方が得策という考え方だ。

 ただし、海外拠点がピア・ツー・ピアで連携するには、「お互いの交流を深める必要がある」(富士通アジアのギャビン・セルカーク社長)。そこで富士通は、毎年1回の頻度で「ポートフォリオ委員会」と呼ぶ会合を開催。各子会社のCEO(最高経営責任者)が一堂に会し、各国の市場動向や実績、成功事例などを情報交換する。

 CEOが「自分の統括地域の顧客に適用できる」と判断する商材を見つけたら、その商材を開発した子会社のCEOと共に、横展開の準備に取り掛かる。開発元のサポートを得る必要があれば、受け入れ側がその費用を負担する。