「現時点でSDN(Software Defined Networking)のニーズが顕在化しているのはデータセンターの分野程度。企業ネットワーク分野などでもSDNの可能性はあるが、新たな市場を切り開くのに苦労している」─。このように語るのは、2013年4月に40人体制で発足したSDN関連のソリューション部隊「SDN戦略本部」を率いる、NECの野口誠本部長だ。

話題先行のSDN、見えにくいメリット

 NECは、2011年春に世界初となるOpenFlow対応のスイッチとコントローラーを発売したSDN市場を牽引するベンダーである。同社では、SDNの世界市場規模は、2013年の1300億円規模から2015年には1兆3000億円程度に急拡大すると予測している。ただしSDNの市場性を有望視しつつも、データセンター分野以外のSDN市場の立ち上げに苦戦しているのが実情だ。

 SDNが今、ネットワークの分野で、最も注目を集めるキーワードであることは間違いない。ただ、注目度の高さの割にはビジネスの立ち上がりは緩やかであり、典型的な話題先行型市場となっている。

 ビジネスが一気に立ち上がらない理由は、これまでのSDNがコンセプト先行で、商用レベルの製品が少なかったこと、大規模なデータセンター事業者向けのメリットは見えるものの、それ以外の分野で効果が不透明だったことがある。さらには、ベンダー各社がそれぞれのコンセプトで「SDN」の名を冠した製品を発表。ユーザーに混乱を招いていることも理由と言える。

 このままでは一般企業ユーザーにとってのSDNのメリットは見えてこない。それどころか市場の停滞感が高まるばかりだ。そこで日経コミュニケーションでは、話題先行となっているSDNをユーザー目線で整理。ユーザーメリットを生むSDNのポイントを示すことで、事例を基にその効果や課題を明らかにする。

SDNとは何か、適用分野ごとに異なる要件

 まずは、SDNは何かという点を整理しよう。狭義のSDNは、「ネットワークをプログラマブルにする機能の総称」と定義できる(図1)。OpenFlowのようなプロトコルを使って、スイッチの制御を集中化。コントローラーと様々な機能を連携させる。これによって「ネットワークが混雑してきたので、自動的に最適な経路に変更する」といった機能が実現できるようになる。

図1●SDNとは何か<br>人によってSDNの意味するところは様々だ。狭義のSDNは、「ネットワークをプログラマブルにする機能の総称」と定義できる。広義のSDNとしては、ネットワーク機能の仮想化やリソースの最適化、運用自動化なども含めて語られることが多い。
図1●SDNとは何か
人によってSDNの意味するところは様々だ。狭義のSDNは、「ネットワークをプログラマブルにする機能の総称」と定義できる。広義のSDNとしては、ネットワーク機能の仮想化やリソースの最適化、運用自動化なども含めて語られることが多い。
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 一方、広義の意味でのSDNは、ネットワークの構成や状態の可視化、ネットワーク仮想化、運用自動化、オーケストレーションまで含まれることがある。