本年7月におこなわれた参議院選挙では、「ネット選挙」が解禁された。ただし、今回解禁されたのはあくまで、インターネットによる選挙運動であり、いわゆる「ネット投票」ではない(関連記事)。その結果、「ネット投票」解禁への期待が高まっている(関連記事)。では今後マイナンバーが普及すれば、国政選挙での「ネット投票」は可能になるのだろうか?
結論を先に書くと、たとえマイナンバーが国民全体に十分に浸透したとしても、マイナンバーの仕組みを使って「ネット投票」を実現するのは困難である。連載第5回の今回は、マイナンバーで何ができないのかを理解するための例として、マイナンバーで「ネット投票」を実現できない理由を考えてみよう。
マイナンバーの用途に「ネット投票」は無し
「ネット投票」を実現するにあたって、最初の壁となるのがマイ・ポータルである。マイ・ポータルは、各利用者個人がインターネット経由でマイナンバーのシステムにアクセスできる、唯一のインターフェースだ。しかし現時点でマイ・ポータルの用途は、「情報提供等記録開示」「自己情報表示」「プッシュ型サービス」「ワンストップサービス」の四つに限定されている。マイ・ポータルの四つの用途に、「ネット投票」は含まれていない。
マイ・ポータルの四つの用途のうち、情報提供等記録開示は、利用者自身の情報を、いつ、どの行政機関が、どういう理由で提供したかを表示する。端的に言えば、「情報提供ネットワーク」の過去ログを表示する機能である。
自己情報表示は、それぞれの行政機関が保有している利用者自身の情報を確認するための機能だが、何でもかんでも情報表示できるとセキュリティ上の問題が懸念されるため、利用者自身による確認のための方法を現在検討中だ。
プッシュ型サービスは行政機関からのお知らせを、ワンストップサービスは行政機関への手続を、それぞれマイ・ポータルでおこなうための機能だ。しかしいずれも現時点では、具体的な検討が十分に行われていない。
このように見ていくと、ワンストップサービスの一種として「ネット投票」を実現する、という“ウルトラC”も考えられなくはない。しかしやはり、法律を改正しないと、「ネット投票」のための法的基盤が整わない、と考えるべきだろう。
たとえ法改正をしたとしても、「ネット投票」を実現するためには、乗り越えるべき二つの壁がある。「なりすまし」の問題と「選挙人名簿」の問題である。