2013年1月14日、東京都心や横浜市を7年振りの大雪が見舞った。自動車が坂道で立ち往生する様子や、雪道で転倒する歩行者の姿がテレビで何度も報じられたことは記憶に新しい。

 実は気象庁の14日に対する予報は「積雪の可能性は小さい」だった。一方で、この日の積雪を早い段階で予測し、早々に注意を喚起していた企業がある。気象情報サービス大手のウェザーニューズだ。同社は前日13日夜のうちに、サービス会員に対して「都心でも積雪に注意」「交通への影響も心配」と通知していた。気象庁が14日に大雪注意報を発表する半日以上前である。

全国400万カ所に“有人観測所”を展開

 「星はっきり」「寒い」…。千葉市美浜区にあるウェザーニューズの予報センターには、今日もひっきりなしにウェザーリポートが送られてきている(図1右上)。その数、1日当たり1万5000~2万件。台風の上陸など平時の気象と大きく異なる日は5万件を超えることも珍しくない。

図1●刻々と増え続けるウェザーリポートの画面(右上)と、ゲリラ豪雨を予測する雲の解析画面(左上)
図1●刻々と増え続けるウェザーリポートの画面(右上)と、ゲリラ豪雨を予測する雲の解析画面(左上)
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 ウェザーリポートを送ってくるのは、全国各地に400万人以上いる「サポーター」と呼ぶ会員だ。スマートフォンや携帯電話のカメラで空の様子や屋外の風景を撮影し、「星はっきり」といったあらかじめ用意された共通表現や、任意のコメントとともにウェザーニューズへ送信する。GPS(全地球測位システム)の値も送られるため、ウェザーニューズからすれば、気象センサーを備える有人観測所を全国400万カ所超に設けているイメージになる。気象庁が有するアメダスの観測所が全国約1300カ所。その3000倍以上である。

 共通表現は、「ポツポツ」「ベチャ」「チラチラ」など約20種類。季節や時間帯によって変えている。サポーターから送られてきた共通表現は、予報センターの壁にあるスクリーン上の地図に色別でプロット。画像データを自動解析し、会員からのコメントは気象予報士が目視で確認して、現在の気象の把握と予測に生かしている。

 冒頭で紹介した1月14日は、午前8時頃までスクリーン上の関東平野一面を「ポツポツ」「パラパラ」という雨を示す青系色のマークが覆っていた。ところが午前9時頃、「ベチャ」「チラチラ」といったみぞれと雪を表現するピンクと白のマークが、神奈川県東部と東京都西部に相次いで出現。その30分後には都内のサポーターから送られてくる気象情報の50%以上が雪を示すものに変わり、午前10時には前日に通知した予報通り、都心を含む地図の広い範囲が白いマークで埋め尽くされた。これを前日に予測できたのは、こうしたサポーターからの膨大な量の報告と過去の予測結果を比較しながら、予測手法の改良を積み重ねてきた成果だった。

 空を撮影した写真は、ゲリラ豪雨の予測にも役立つ。具体的には、画像解析ソフトを使って写真に含まれる雲の色を判別。黒色が濃い場合は、気象予報士に注意を促すべく赤枠で囲ったうえで地図上に配置する(図1左上)。森田清輝取締役は、「スマートフォンや携帯電話のカメラの解像度が高まったので、予測に利用しやすくなった」と語る。ウェザーニューズは現在、ゲリラ豪雨の予測精度を引き上げるため、雲の形を解析して危険度を判定する機能の研究開発を進めている。