「設立当初は『何をしている会社ですか?』とよく聞かれました。そのたびに『普通のIT関連企業です』と。それしか答えようがありませんでしたから」。ワイズスタッフの田澤由利代表取締役は、こう言って笑う。田澤氏はとにかく明るくエネルギッシュだ。液晶テレビの画面からは、そんな印象が伝わってくる。

写真1●テレビ会議システムを使ったインタビューの様子
写真1●テレビ会議システムを使ったインタビューの様子
北海道北見市と東京都千代田区は直線でも約970km離れているが、まるで対面しているかのように話が進んだ。
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 そう、この日は北海道北見市と東京都千代田区のオフィスをインターネットでつなぎ、テレビ会議システムを使ってインタビューを行った(写真1)。会議机を挟んで実際に対面しているかのようで、少しの違和感もない。要所ではテレビ画面にプレゼンテーション資料を映し出して詳細を解説する。途中、パソコンの画面に切り替えて仮想オフィスを実現するクラウドサービスを表示。韓国や東京で在宅勤務している社員に「○○さーん」と呼び掛ける。するとスタッフは同じ部屋にいるのではないかと思うほどのタイミングで、田澤氏の呼び掛けに応じた。

 いずれのシーンもワイズスタッフにとっては日常だ。早くからワークスタイルの変革に挑み、既にテレワークが定着している同社では、一つ屋根の下に社員が集まる企業と同じく“ 普通”に業務がまわっている。総勢160人を数えるスタッフは国内外のいたるところに分散しているにもかかわらず、である。

女性が最も働きにくい時に働ける会社に

 「結婚や出産、夫の転勤などの事情で働きたくても退社せざるを得なくなった女性が、それまでと同様に能力を発揮できる社会にしたい」。そんな思いが田澤氏をワイズスタッフの設立に踏み切らせた。1998年10月のことだ。以来、ホームページ製作やネットリサーチを手掛け、2000年度以降コンスタントに1億円以上を売り上げている。

 田澤氏自身、夫の転勤をきっかけに、働き続けたい思いを抑え、約6年勤めた会社を去った経験がある。その後、ライターとして自宅で原稿執筆する日々を過ごし6年ほどたった頃、夫の北見市転勤が決まる。時を同じくして、「SOHOの第一人者」として知られる存在になっていた田澤氏の下に、出産や育児などで退社した女性から相談が相次いでいた。「9割9分は在宅勤務に関して悩みを抱える女性からの問い合わせだった」

 少子高齢化が進み、労働力人口の減少が問題視されると同時に人材の多様性(ダイバーシティ)が重要視される今でこそ、女性活用の必要性を指摘する声は珍しくなくなった。しかし、かつてはデータ入力などの仕事はあっても「会社で経験を積んできた女性が、そのスキルを生かしながら在宅で働ける環境は整っていなかった」(田澤氏)

 その点、ワイズスタッフは「育児などで女性が最も仕事を続けにくい時期に働ける」(同)。その証拠に160人のスタッフのうち、9割以上が女性だ。しかも、書類選考に次いでホームページ作成やWebプログラミングの実技試験を実施し、田澤氏との最終面接を通過した女性ばかりである。