前回は、日本政府が主導している「グローバル人材育成方針」と「グローバル人材 = 英語ができる人」ではないことを書きました。今後、日本がグローバルマーケットの中で成長していかなければならないのは必然です。少子高齢化にともない、国内のマーケットは縮小し、仕事が減るのも歴然だからです。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)などの動向も日本のグローバル化を加速するでしょう。

 それでは、グローバルで通用する人材となるためにはどうすればよいのでしょうか。筆者が今まで経験したことをもとに、グローバルビジネスを推進する上での必要な考え方、成功した事例、失敗した事例から考えてみたいと思います。

グローバル標準を正しく理解する

 筆者がアメリカのICT企業で働いていた頃、ニューヨークに駐在していました。日本からお客様や社員が訪問すると、ミーティングや会議に同席することが頻繁にありました。

 大人数の会議やセミナーなど、聞いているだけでよい場合は良いのですが、ディスカッションして何かを決定しなければならないミーティングとなると、日本人は発言が極端に少なくなりました。発言しないならまだしも、中には寝てしまう場合もあります。

 時差と疲れから眠たくなるのは仕方がないかもしれませんが、重要なミーティングでコックリコックリしているお客様や社員を見て、外国人の参加者が呆れ顔でしばし沈黙して固まってしまうことが幾度となくありました。お客様やエグゼクティブの足を蹴飛ばすわけにもいかず、大きめの咳払いや資料で手をつついたり、いろいろと苦労した経験があります。

 ある程度のポジションにいる人が、ミーティングの席上で居眠りをするということは、異常事態です。当たり前ですが、何かを決めなければならないミーティングで意見を言わないのは、その人の存在価値がないというのがグローバル標準です。

 日本では、全体の流れや雰囲気をみながらうなずいていればそれでよい、というケースが多いかもしれません。しかし、グローバルチームとのミーティングにおいて、流れに従うにしても、発言しない、ましてや眠っている、というのは価値がない人とみなされてしまいます。「沈黙は金、雄弁は銀」ということわざがあります。時と場合によっては、正しいのでしょうけれども、ビジネスミーティングでは当てはまらないでしょう。

 言わなくてもわかるだろう、頷いていれば良いだろうは通用しません。これ以外にも、日本では許されてもグローバル標準では許されないことは多々あります。多種多様な人種が多種多様な文化、習慣をバックボーンにもっている中では、グローバルな共通のルールに従う必要があります。