熱中症に要注意。小まめに水分を。こんな言葉が浮かび早速、ミネラルウォーターを買う人も多いだろう。外出先で頼りになるのは自動販売機。暑い日に冷えた水が飲めると、ほっとした気分になる。

 では、自販機の運営は、品切れを減らし、売れ筋を見極めるためにどうしているのか。実はそこにもデータ分析がある。今回は、その先端的な取り組みを紹介しよう。

 「担当している自販機の収支が悪化しています。対策を報告してください」。アサヒ飲料グループで自動販売機の設置、運用を担当するアサヒカルピスビバレッジ(東京・墨田)。首都圏の営業担当者が朝パソコンを開けると、こんなメッセージが表示される。営業担当者が収支改善策を講じて、システムに登録するまで消えない。

 このアラートを出すのは、2012年12月に稼働した新基幹システム「SPA(セールス・プロフィット・アシスタント)システム」。アサヒカルピスが全国で展開する約27万台の自販機のうち、首都圏の約7万台について、1台ごとに収支を日次で割り出す。自販機ではコーヒーやお茶、炭酸飲料など様々な商品を扱うが、収支が大幅に悪化すると、その担当者に対策を促す。そのプロセスをSPAで自動化している。

収支計算が煩雑で、苦戦を見逃す

 世界有数の自販機大国といわれる日本だが、この10年間総台数は250万台前後で推移。市場はほとんど拡大していない。値引きが少なく、量販店などに比べると利益率は高いとされるが、近年は自販機間の安売り競争もあり、収益性は徐々に悪化している。

 これに加えて収益性を左右するのが、ビル内や商店前など、自販機を設置する場所の所有者、通称「ロケオーナー」の取り分だ(図1)。アサヒカルピスをはじめ、飲料メーカーの営業担当者は、自販機の設置時にロケオーナーと交渉し、売り上げの一定割合をロケーションフィーとして支払う契約を結ぶ。立地が良く、売れ行きが好調な自販機では、契約更改時期を狙って他社がより高いロケーションフィーをロケオーナーに提案し、「ひっくり返す」こともままあるという。

図1●飲料自販機の収支を改善するために様々な対策が必要に
図1●飲料自販機の収支を改善するために様々な対策が必要に
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 しかしせっかく好立地を確保しても、いざ自販機を設置してみると販売量が当初の見込みに達しない場合もある。すると1本当たりの売り上げから、商品原価、販売促進費、営業経費、ロケーションフィーなどの変動費を差し引いた限界利益が減少し、赤字になることすらある。

 営業担当者は後述するような対策を早急に打つ必要があるが、「これまでは自販機1台当たりの収支を算出するのに時間がかかり、収支が悪化しているのに何の対策も打っていないケースがあった」とSPAシステムを構築したアサヒカルピスビバレッジ企画部の藤原慎二部長は話す。