ゲーミフィケーションを人事評価に適用する例を紹介しよう。ゲーミフィケーションを取り入れた人事評価システムによって、社員のモチベーションを高める試みである。

 米Salesforce.comの「Work.com」が好例だ。これは、点数表示や報酬付与などの仕組みを取り入れながら、人事評価をするシステムである。

 まず、社員が個人の業績目標を設定しWork.comに入力する。この目標は社内で共有される。進捗状況も入力するので、利用者は自分と他者がどこまで達成しているかを把握できる。これは点数表示の仕掛けだ。

 面白いのは、社員同士でその人の行動を称たたえる「バッジ」を贈り合えることだ(図1)。ある仕事を別の社員に助けてもらった場合は「支援ありがとう」、目標達成した同僚には「達成おめでとう」などのバッジを贈ることができる。これは報酬付与の仕組みといえる。バッジの獲得数は、人事評価の対象になるため、バッジの獲得に向け目標の達成に努力するようになる。

図1●Salesforce.comの人事評価システム「Work.com」の画面
図1●Salesforce.comの人事評価システム「Work.com」の画面
その人の行動を称える「バッジ」を社員同士で贈り合い、表示する機能を備える
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 ポイントカードシステムの導入などを手掛けるシンクスマイルも、人事評価にゲーミフィケーションの考え方を取り入れている。ソーシャルゲームなどを制作するカヤックと共同で開発した独自の人事評価システム「CIMOS」上で、社員同士が「スマイル」「スピード」「熱血」など10種類のバッジを贈り合う(図2)。「10種類のバッジは当社の行動指針に結びついており、バッジの獲得に向けて行動すると自然と企業が求める人材像になる」(シンクスマイル 代表取締役 新子明希氏)。

図2●シンクスマイルの企業Webサイトの画面
図2●シンクスマイルの企業Webサイトの画面
社員に「バッジ」を贈る機能とバッジの獲得数を公表する機能を備える
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 CIMOSは同社の企業Webサイトに公開している。社員がどのようなバッジをどれだけ獲得しているか社外の者でも分かるのだ。また、Facebookのアカウントを持っていれば誰でも、シンクスマイル社員にバッジを贈ることができる。これにより、「顧客から感謝の意味を込めてバッジを贈っていただくことがあり、モチベーション向上に役立っている」(新子氏)。