ゲーム的要素として最初に考慮するとよいのが、利用者に感情移入させる機能だ。利用者が親しみを持つキャラクターを登場させたり、ユーザー好みの雰囲気や世界観を作れるようにしたりする。“自分だけのシステム”であることを演出し、入力を促すのだ。

システムにキャラクターを登場させると、利用者は自分を重ね合わせる。システムに登場させたキャラクターは、後述する「点数表示」や「報酬付与」の機能と組み合わせて、ゲームの主人公として振る舞うようにする。例えば、「点数に応じてキャラクターが成長する」「キャラクター向けのアイテムを報酬として受け取る」といったことをできるようにする。すると、「ゲーム感覚で、楽しみながら入力してもらえるようになる」(eラーニングシステムの開発を手掛ける、デジタル・ナレッジ 文教ソリューション事業部長 中嶋竜一氏)。
中嶋氏は、自社のeラーニング製品(KnowledgeDeliver)にゲーム的要素を取り入れるための「ゲーミフィケーション・パーツ」というオプション製品の開発を指揮した。このオプション製品を使うと、画面に利用者ごとのキャラクターを表示させることができる(図1)。「教材を進めていくにつれてキャラクターにアイテムを追加できるので、自分の成長をキャラクターを通じて実感する」(中嶋氏)。
自分好みに変えられないとクレーム
画面の雰囲気(テーマ)をカスタマイズする機能も、感情移入を促す手段としては有効だ。サイボウズのグループウエア「Office 9」では、約70種類あるテーマから選べる(図2)。「多様なニーズに応えるため、従来の業務システムでは考えられない奇抜なデザインも用意している」(サイボウズ ビジネスマーケティング本部 プロダクトマネージャー 栗山圭太氏)。
テーマ変更の機能が利用者に求められていることを示すエピソードがある。Office 8からOffice 9にバージョンアップしたとき、テーマ変更機能を削ってしまった。すると、「画面を自分の好みに変えられない」というクレームが殺到。「サイボウズ創業以来のクレーム数だった」(栗山氏)。急きょテーマ変更機能を復活し、以来選択可能なテーマを追加し続けている。