東南アジアでは携帯電話の普及率が100%を超える国がいくつもある中、ミャンマーはいまだに1割に届かない。ただ最近、本格普及の兆しが見えてきた。かつての1/1000という価格のSIMカードが登場してきたからだ。2013年9月までには海外通信事業者2社に免許が交付予定で、ミャンマーの携帯市場は激変しそうだ。
ミャンマーにおける携帯電話の普及率は2012年12月時点でわずか9%にすぎない。隣国のタイやフィリピンが既に100%を突破したのに比べて、大きく出遅れている。そこでミャンマー政府は2015~2016年に携帯と固定を合わせた電話普及率を75~80%にまで高める野心的な目標を掲げた(表1)。固定電話の加入数は停滞傾向にあることから、携帯電話の普及に向けた取り組みを具体化している。
その一つが2013年4月24日に販売開始された低価格SIMカードである。価格は一般市民にも手が届く水準の1500チャット(1チャット=0.1円換算で150円)。あらかじめ300チャット(30円)分のチャージが組み込まれている。1分当たりの通話料金は従来と同額の50チャット(5円)である。
かつてミャンマーでは長年にわたり、150万チャット(15万円)という異常な高値でSIMカードが販売されてきたが、今回の価格はこの1/1000となった。当時の高値は民政移管前の軍政下で設定されたものであり、一般市民の携帯電話所有を抑制することで情報統制を図る狙いもあった。価格は一気に下落したわけではなく、2010年以降段階的に引き下げられた。それでも、20万~50万チャット(2万~5万円)で下げ止まっていたため、一般市民が手を出せないという状況に何ら変化はなかった。
販売枚数を限定
現在唯一の固定・携帯電話事業者で国営のミャンマー郵電公社(MPT:Myanmar Posts and Telecommunications)は、当初3カ月で累計約100万枚の低価格SIMカードを販売する計画を打ち出している。この計画に沿って、4月と5月にそれぞれ35万枚を発売した(6月の販売枚数は6月30日時点で未公表)。SIMカードの発行元は国軍所有企業のミャンマー経済公社(MEC:Myanmar Economic Corporation)傘下のMECTELだが、実態としてはMPTが提供するサービスだ。
同国のモバイルネットワークインフラが脆弱なことから、月間の販売枚数を限定することで、輻輳が発生しないようにしている。一般の小売店では販売せず、各地方自治体が割り当てられた枚数を原則抽選方式で販売する。