総務省が携帯各社の行き過ぎた広告宣伝競争にメスを入れようとしている。この問題について、検討会や研究会を立ち上げる方針を示したからだ。スマートフォン(スマホ)が使えるエリアや速度表記の面で、実態と乖離した広告宣伝が目立つ中、業界健全化の一つのきっかけになる可能性がある。現在の「言ったもの勝ち」的な状況は、ある程度是正される道が見えてきた。

 総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」は2013年7月2日に開催した会合で、スマホを安心・安全に使っていくための提言として「スマートフォン安心安全強化戦略」(案)を打ち出した。

 プライバシーの扱いの強化や青少年のスマホ利用の健全化など多岐に渡る内容だ。その中の一つ「CS適正化イニシアティブ」では、FTTHやスマホの販売店における課題、モバイル通信のサービス品質や提供エリア表示など、多くの問題にメスを入れている。

 例えば「全国消費生活情報ネットワーク・システム」における電気通信サービスに関する苦情・相談を分析。電気通信サービスで苦情・相談件数が増えており、スマホ分野では「契約解除料」や「通信エリア」「通信速度」といった苦情・相談が多い傾向を示した。

 そのため「利用者が正確な情報に基づき契約が可能となる環境を整備することが必要」と指摘。「諸外国等の国際動向を参考にしつつ、有識者等を交え、事業者中立的な実効速度の計測・公表等の在り方について実証を含め検討」と、早々に検討会などを立ち上げて議論する方針を示している。

あやふやな基準での競争が横行

 確かに、現状の携帯各社の広告宣伝では、エリアと速度表記の側面で、実態と著しく乖離しているケースが目立ってきている。例えばKDDIがLTEのエリア表記について、実際にはAndroid端末の利用エリアにもかかわらず、未対応のiPhone 5を含めた形で広告宣伝に使うという“誤記”問題を起こした。ユーザーに大きな不利益を招いたことは記憶に新しい。

 もっともユーザーの視点からすればエリアの問題はこれだけではない。各社が“売り”として盛んに宣伝に使っているエリアカバー率は、実は各社でまちまちの基準に基いており、単純比較できないからだ(図1)。

図1●事業者ごとに違う人口カバー率の定義
図1●事業者ごとに違う人口カバー率の定義
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 例えばNTTドコモは総務省がこれまで基準として採用してきた市町村事務所方式の人口カバー率を採用している。市町村単位のエリアにおいて、当該エリア内に含まれるすべての市町村事務所をカバーした際に、そのエリア全域をカバーしたとみなす。