NTTデータが開発・提供する航空機の飛行経路設計システム「PANADES」が、アジアで快進撃を続けている。海外展開からわずか1年間で、タイの航空交通管制公社を皮切りに、インドネシアとベトナムの航空総局から立て続けに受注を果たした。PANADES事業を率いる第一公共システム事業部営業部の伊神惠部長は、「年内にアジアでさらに2件の受注を見込んでいる」と明かす。

 PANADESはNTTデータが日本の国土交通省航空局向けにオーダーメイドで開発したシステムを基に、3~4年かけてパッケージ化したものだ。風向きや航空機の性能といったデータを担当者が画面上で入力すると、飛行ルートを自動で計算・描画する(図1)。

図1●飛行経路設計システム「PANADES」の操作画面(左)とインドネシア航空総局の設計士たち
図1●飛行経路設計システム「PANADES」の操作画面(左)とインドネシア航空総局の設計士たち
画面右側に各種パラメータを入力すると、同左側に空港への着陸経路を自動で描画する
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 PANADESの売れ行きが好調な最大の理由は、「競合製品に比べて自動化できる対象範囲が広い」(伊神部長)ことにある。

 インドネシア航空総局で飛行経路の設計士を務めるファジャル・スナルジャント プロシージャデザイナーは、「PANADESを使うと、1週間で一つの経路を設計できる」と証言する。導入前は設計作業を手作業でこなしており、約1カ月かかっていたという。実に4倍以上、作業スピードが向上した計算だ。

 販売好調の理由は、他にもある。例えば「カスタマイズなしで売りやすい」(伊神部長)という点だ。飛行経路は国際的なルールに沿って設計する必要があるため、各国の製品に対するニーズはほぼ共通している。

 利用者が航空関連の政府系機関に限られる、ニッチ市場のソフトである点も見逃せない。飛行経路の設計ソフトを提供できる企業は、「世界中で4~5社しかない」(伊神部長)。専門性が高く、競合製品が少ないことが追い風となっている。

新興国の主流は今でも手作業

 「飛行経路設計システムに対するアジアでの需要はさらに高まる」と、伊神部長は見込む。新興国の多くは、今でも手作業で経路設計に取り組んでいるからだ。

 PANADESを採用した組織のうち、ベトナム航空総局と前述のインドネシア航空総局も、以前は手作業でこなしていた。国際基準に関する分厚いマニュアルを参照しつつ、電卓などで複雑な計算をしていたわけだ。1経路につき何パターンも設計した上で最良のルートを選ぶ必要があるため、経路確定までに時間がかっていた。

 インドネシア航空総局では、10人強の設計士が1年間で約50の飛行ルートを設計する。今後、経済発展に伴い空港の新設が増える見通しであり、設計作業も増加が必至だ。こうした事情は、多くのアジアの国に共通する。新興国の発展を、メードインジャパンの自動化ソフトが支える。