企業がソーシャルメディアに相対するにあたって、不可欠な要素の1つとなっているのが「リスニング」、つまり「ソーシャルメディアの世界で、何がどう語られているかを調査し把握すること」だ。

 日本では当初、「リスニング」を積極的に実践していた企業はそれほど多くはなかった。最近になってようやく、一部の企業で重要度が高いものとして位置付けられるようになってきたようだ。背景には、(まだ少しずつではあるものの)「ソーシャルメディア分析ツール」が普及してきたこともあるだろう。

 この「リスニング」について、日本国内の企業の現在の事情を俯瞰できる「企業によるソーシャルリスニングに関する動向調査」と呼ぶ調査結果を、2013年8月5日にNTTデータ経営研究所が発表した(発表資料)。今回はこのデータから垣間見えた、日本のソーシャルメディアリスニング事情を考えてみたい。

 同調査によると、半数近く(43.4%)の企業が「自社の風評や炎上、機密情報の漏洩などに関するソーシャルリスニングを実施している」という。さらに「自社の商品・サービスに関する投稿数やポジティブ・ネガティブ件数の定量的な把握」や、「自社の商品・サービスに関するキャンペーン、イベントなどのSNS投稿数やポジティブ・ネガティブ件数の定量的な把握」といった目的で「リスニング」を実施していると回答した企業も40%に近い数字となっている。

 ただし、公開されている図表には「積極的に実施」と「それなりに実施」という回答しか表示されておらず、「積極的に実施」という回答は多くても全体の15%程度。こうしたところから考えると、何らかの目的を持ち「リスニング」という手段を効果的に活用している企業は少数派に属するのではないかと推測できる。

 調査結果を細かく見ていくと「リスニング」の最たる目的は「風評被害対策」と考えられるようだ。企業として関心の高いテーマが「風評」をはじめ「炎上」、「機密情報の漏洩」、あるいは「ポジティブ・ネガティブ件数の定量的な把握」という点に集中していることからも、そういった傾向が感じられる。