本特集のモノづくりのテーマは「スマホ・タブレット時代のガジェットづくり」。第1回は「スマホ・タブレット時代のガシェットとは何か」から、ガジェットづくりのための重要な概念「フィジカルコンピューティング」、そして各種ツールキットについて解説します。

スマホ・タブレット時代のガジェットとは?

 携帯端末市場は、従来のフィーチャーフォンからスマホ・タブレット端末へと市場がシフトしつつあり、国内のスマホ/タブレットの販売台数は2011年に2566万台であったものが、2016年には4910万台までに成長すると指摘されています(市場調査: “レポート スマートフォン/タブレット端末の周辺機器、アクセサリ市場と新ビジネス”、シード・プランニング、2012)。

 スマホ・タブレット端末が従来の携帯端末と大きく異なる点の一つに、アプリなどによるWebコンテンツとの連携の強化があげられます。このスマホ・タブレット端末の特徴から、携帯端末向けの周辺機器やアクセサリーなどのガジェットにも、今、大きな変化が起こっています。

写真1●米Nikeの「FuelBand」
写真1●米Nikeの「FuelBand」
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 例えば、米Nikeが提供する「FuelBand」(写真1)が挙げられます。FuelBandは腕時計型のガジェットで、内蔵する3軸の加速度センサーによって計測した手首の動きから、独自の活動量単位「NikeFuel」を算出し、スマホと連携することで、その結果を評価・記録します。

 また、FuelBandは、ユーザーの目標達成の程度を知らせるためのLEDやディスプレイを備えており、従来の携帯端末向けに提供されてきたガジェットとは一線を画すほど、インタラクティブかつリッチな機能を提供しています。さらに、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)との連携は強力で、アクティビティを共有しあうことで他のユーザーのモチベーションの維持にも繋がっています。

 このように、スマホ・タブレット時代のガジェットは、単に端末を着飾る、充電するだけでなく、より生活に密着したコンテンツを提供する存在として、今、多くの周辺機器メーカーが注目しているのです。

フィジカルコンピューティングの時代

 FuelBandのようなガジェットの特徴は、連携する端末のハードウエアのインタフェースにとらわれず、さらに拡張することで新たなコンテンツを提供している点にあります。例えば、FuelBandは腕に装着するリストバンド型の形状による拘束と、そこから計測した加速度という操作量によって「運動」というコンテンツに価値を与えているのです。