「顧客との密なダイレクトコミュニケーションができるようになってきた」─こう胸を張るのがJSOLの池田明聡経営企画本部総務部長。同社は2007年に社員が利用する電話端末を固定電話機から携帯電話機に置き換えた。併せて部門代表をなくし、営業担当者やシステムエンジニアが顧客と1対1でコミュニケーションする業務スタイルに変えた。「部署単位の営業から個人単位の営業へ変える」という当時の社長の方針にのっとったものだ。電話の刷新をワークスタイル変革のトリガーにできた好例といえるだろう。

 現在、多くの企業がオフィスの電話を検討すべき時期に直面している。今から8年ほど遡った2005年3月、NTT東西は光ファイバーを使ったIP電話サービス「ひかり電話ビジネスタイプ」の提供を開始した。これを軸に低料金のIP電話サービスが急激に普及し、PBXビジネスホンなどの内線電話システムを更新する企業が相次いだ。「2007年から2008年にかけてIP電話関連の投資はピークを迎えた」(IDC Japanの眞鍋敬ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャー)。

 当時投資した内線電話システムが、今まさに保守切れを迎えようとしている。内線電話システムの保守期間は5~7年が一般的。保守の延長を交渉したり、保守切れの状態で使い続けたりする企業もあるが、保守の期限が切れた時を更新のタイミングと考える企業が多いはずだ。日本コムシスの相田悦男執行役員ITビジネス事業本部副本部長営業部長は「2012年から更改案件が増えてきている」と明かす。

 ただ今回の電話の刷新は、情報システム部門や総務部門に一つの難題を突き付ける。投資回収の筋道が立てづらいのだ。

 ひかり電話の登場以来、固定電話料金は「3分8.4円」に据え置かれている。大きく料金を引き下げるようなサービスは登場していないし、通信事業者も「これ以上の引き下げは難しい」(NTTコミュニケーションズの高山充ボイス&ビデオコミュニケーションサービス部サービス企画部門担当部長)と漏らす。「これまではISDNやマイライン、ひかり電話、直収電話など、通話料を下げる回線サービスが数年おきに登場した。更新の時に回線サービスを切り替えて、電話に関わるコストを減らす企業が多かった」(フォーバルの松山哲也マーケティング推進室室長)。

 固定電話料金が下げ止まっている現在、従来と同じ考え方では電話を更新できない。そこでシステム部門や総務部門が取り得る方針は大きく2つある(図1)。一つは電話の刷新をワークスタイルの変革に結び付ける“攻め”の方針。もう一つはできるだけコストをかけずに更新する“守り”の方針だ。

図1●内線電話システムの更新期を迎える
図1●内線電話システムの更新期を迎える
法定耐用年数を超えて次期システムについて検討すべき時期に入った。
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