売上高の伸び率が対前年比350%と急成長中のベンチャー企業であるチームスピリットを率いる代表取締役の荻島浩司氏。同氏は現在53歳である。同社は米Salesforce.comの企業向けソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「Chatter」と、勤怠管理/プロジェクト工数管理/経費精算などを連携させたクラウド型の人材管理ソリューション「チームスピリット」を提供するクラウド専業の事業者だが、以前は受託開発が事業の中心だった。荻島氏に同社が受託開発をやめ、クラウドサービスに完全に事業の軸足を移した経緯やシニアの起業について聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=ITpro


起業した当初は受託開発が中心だったとうかがっています。

チームスピリット 代表取締役の荻島浩司氏
チームスピリット 代表取締役の荻島浩司氏

 1996年に独立してからは一人でコンサルタントとして相手先の企業に常駐していました。形式としては請け負いです。相手の名刺で製品を企画したりしていました。そのころはあまりそうしたことも問題にされなかったんです。それが最初です。その後、2005~6年ころからその延長で、その中ではできない開発案件があったので、従業員を増やし、それを請け負って受託してやっていました。

 どういった開発案件かというと、基本的には銀行向けのシステムで、大別すると二つありました。契約書を保管する仕組みとオペレーショナルリスクのリスク管理のシステムです。30行くらいに入っています。

受託ビジネスで成功していたように見えます。

 問題は何もなかったんですが、結構ITの世界って10年おきくらいに繰り返すことがあるじゃないですか。クライアント/サーバー型のシステムのように、どこか社内にサーバーがあるというのは終わりに近づいている、ということを感じていて、じゃあ次をどうしようか、ということを受託開発をしながら思っていました。

 独立をした96年は、Windows 95が登場したタイミング、インターネットが商用利用されるようになったタイミングです。元々そこでスタートアップとして成長を目指したベンチャーをやろうと思ったんですが、たまたまその時点ではうまくいかなくて、ファミリービジネス的なことを続けてきました。元々何か世の中に価値を残したいという気持ちは持っていました。

 2007年に銀行のシステムをやっていたときに、ドイツの会社がSaaSをシステムインテグレータに売り込みにきました。当時我々は銀行向けの堅い仕事をしていて、新しい技術よりも枯れた技術を使っているなかで、「ヨーロッパでは銀行でもSaaSを使っているんだよ」という話を聞いた。銀行で使われるようになれば、それはいずれは使われる、そういう時代になるなと感じましたね。

それでクラウドの方向に舵を切った。

 正式に始めたのは2009年です。ここを目指さなければならない、ということは分かったんですが、当時はホスティングをしなければならなかった。最初に設備投資が必要だったんですね。ほかの会社のシステムの受託を続けながら、2~3カ月間でプロトタイプを作って展示会に出したりしました。