今回の投稿は、ブランク氏が空軍士官学校に訪問したときのエピソードです。訪問時にブランク氏が驚いたことの一つは、サイバー戦争のカリキュラムでした。米軍は中国との情報戦の真っただ中にあり、その活動に敬意を払う一方で、経済活動の基盤となる情報システムの脆弱性には懸念を示しています。(ITpro)

 私のリーンローンチパッド・クラスの生徒だったトッド・ブランチフラワー氏は、工学修士を取得するために空軍を説得してスタンフォード大学に行かせてもらうほど、起業家精神がありました。彼は、私の「シリコンバレーの秘密の歴史」の講義に参加し、どのような偶然により第二次世界大戦中に兵器システムとアントレプレナーシップが形成され、そしてそれがシリコンバレーにもたらした連邦政府による科学支援に魅了されました。

 クラスで私はトッドに、「海軍からは、修士課程にいる4000人の海軍士官候補生を前に『シリコンバレーの秘密の歴史』の講義をするよう依頼を受けたことがあるが、空軍士官学校からの依頼はいまだ受けていない」と、冗談まじりに言いました。彼はいずれ実現すると約束しました。

 それから3年後、彼は空軍大尉として、空軍士官学校で電子工学を教えています。彼は、コロラド・スプリングスにある空軍士官学校で教授たちに会って、空軍士官候補生に講演しないかと私を招いてくれました。

 飛行場を出発して、最初に訪れたのはデンバー市でした。そこで、インキュベーター企業であるガルバナイズで即席の会合を持ち、200人ほどの素晴らしいアントレプレナーがいる満員の部屋で、ざっくばらんな話をしました。

米国軍部の士官学校

 その後、コロラド・スプリングスにある空軍士官学校に行きました。全ての米国軍士官は、大学の学位が必要です。空軍士官学校は、4校ある米軍士官学校の一つです。一番古い士官学校はニューヨーク州ウエストポイントにある陸軍士官学校で、1802年に創立されました。次に古い士官学校は、メリーランド州アナポリスにある海軍士官学校で、1845年に設立されました。沿岸警備士官学校は、コネチカット州ニューロンドンに1876年に設立されました。

 空軍は、1947年までは独立した部門ではなく陸軍の一部門でしたが、1955年にコロラド・スプリングスに空軍士官学校が設立されました。米軍の将校のうち、これら4校の卒業生は20%以下にすぎません。40%以上の将校は、米軍が学資を負担する、各大学内にある予備役将校訓練部隊(ROTC)プログラムの出身です。それ以外は、普通の大学で学位を取得し、10週間の「将校訓練学校」を終了してから、各軍に入隊します。

秘密の歴史

 私は過去に空軍での任務経験があったので、空軍将校1000人を前に「シリコンバレーの秘密の歴史」を講演するのは、この訪問における最大のイベントだと感じていました。講演は期待以上に楽しく、満員の講堂、スタンディング・オベーション、素晴らしい反応、さらにはトロフィーの授与がありましたが、しかし全く予期していなかった2つの出来事が、この訪問をより興味あるものにしました。

 第1の出来事は、電子・コンピュータ工学部や経営学部の教授たちと面談し、リーン・スタートアップとリーンローンチパッド・クラスで私が学んだことを分かち合ったことです。空軍士官学校で電子工学を専攻する全学生は、最終学年において、2つの学期にまたがるキャップストーン・クラス・プロジェクトを選択します。彼らは、実際に使用するかもしれないプロジェクトの仕様を決め、デザインし構築します。

 残念なことに、そのクラスはあたかも軍の購入システムのように運営されました。プロジェクトの仕様には、実際のユーザーからのインプットはほとんど無く、製品はウォーターフォール・エンジニアリング・プロセスで作成され、製品が現実のユーザーのニーズを満たしているかどうかは、製品ができ上がるまで分かりません。つまり、生徒たちは多大な時間と努力をかけて「最終」製品を作成しますが、でき上がった製品が現実のユーザーのニーズに合わないことはほとんど確実で、ユーザーのニーズに合致するものにするには、大幅なやり直しと変更が必要です。

 私は、教授たちがキャップストーン・クラスに顧客開発手法を採用することにより、空軍内の「見込み顧客」からのインプットを得ることに興味があると知って驚きました。そして、どうすればエンジニアリング・プロセスをアジャイルにできるのか、すなわち、生徒たちが顧客からのフィードバックを入手するのと並行し、製品を段階的にしかも反復して開発できるか、ということに興味を示したことにも驚きました。

 キャップストーン・プロジェクトの成功は、その製品が「動作した」という技術的な評価だけでなく、生徒たちがユーザー自身とユーザーのニーズを、どれほど学んだかに依存しています。私は教授たちに対して、その手法をどのように教えているかを学ぶために、リーンロンチパッド教育者コースに出席することを薦めました。

 私が影響を与えたかどうかは、結果を待ちましょう。