昨今、急速に注目を集めている東南アジアの新興国がカンボジアである。2013年6月中旬、筆者は首都プノンペンを訪れ、現地の最新事情を視察してきた。日本のICT企業にとって、新たなマーケットになりえるのか、無線やインターネットなどITインフラの状況はどうか、オフショア開発の拠点として有望かといった点について、それぞれの状況をコンサルタントの視点から今回、まとめてみた。

写真1●治安が良くなってきたプノンペンの街並み
写真1●治安が良くなってきたプノンペンの街並み
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 実際にカンボジアを訪れてみると、首都プノンペンの治安はよく、ICTインフラの状況はミャンマーの首都ヤンゴンなどよりかなり進むなど、タイやベトナムといった近隣諸国と比べても遜色ないように思われた(写真1)。だがオフショア開発の拠点やICT市場としての可能性は、現段階では未知数といえる。

 優秀な人材の育成や確保など今後の課題はあるが、東南アジアを中心にグローバル展開を狙う日本企業にとって、目が離せない国になることは間違いない。

イオンなど日系企業の進出が大きな話題に

 12年の世界銀行の調査によると、カンボジアの一人当たりGDP(国内総生産)は946ドルだった(図1)。これは東南アジアでは最低ランクに相当するが、近年は年率7%前後の経済成長を続けている。高い成長率は大いなる可能性を表しており、一人当たりGDPの低さは人件費や投資コストの安さにつながる。

図1●一人当たりGDP推移をみると、2012年はカンボジアは946米ドル、インドネシアは3557ドル、ベトナムは1596ドルだった。出典:世界銀行のサイトより
図1●一人当たりGDP推移をみると、2012年はカンボジアは946米ドル、インドネシアは3557ドル、ベトナムは1596ドルだった。
出典:世界銀行のサイトより
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写真2●日系企業の進出が増えたプノンペンSEZ(経済特区)
写真2●日系企業の進出が増えたプノンペンSEZ(経済特区)
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 こうしたメリットに、既に多くの日系企業が着目しはじめている。製造業では低コストを背景に、プノンペンSEZ(経済特区)にミネベアや住友電装、味の素などをはじめとした日系企業の進出が相次いでいる(写真2)。そして、特に現地で大きな話題になっていたのが、イオンのショッピングモールだった。

 これはプノンペンの高級住宅街に近い開発地区で東京ドーム2個分にも相当するフロア面積の大型施設の建設が、14年の開業を目指して急ピッチで進められている。海外進出に積極的なイオンは、14年にはベトナムやインドネシアでもショッピングセンターの開業を計画しているようだが、これらに匹敵するプロジェクトといえそうだ。

写真3●建築中のイオンのショッピングモール
写真3●建築中のイオンのショッピングモール
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 今回、建設現場を訪ねてみたが、既に骨組みが出来上がっている様子に圧倒された(写真3)。店舗スペースだけでなく、大きな立体駐車場も含め1400台以上の車が停められる計画という。プノンペンにもスーパーマーケットや中規模のショッピングモールはあるが、これほどのサイズのモールが展開されるのは現地でも驚きだという。

 イオンの調査によると、開業予定地から半径1km圏内の75%の世帯が月収800ドル以上、5km圏内でも78%が400ドル以上で、充分な商機ありと判断したという。広大なテナントスペースへの出店予定店舗も早々に決まったというのも、現地の急成長ぶりを表しているようだ。