日本のSEは、日夜頑張ってシステム開発などの仕事をしている。そして会社を支えている。だが、多くのSEが営業や会社はSEを分かっていないなどと結構不満を持っている。しかし、SE自身も技術偏重、受け身意識、ビジネス意識の希薄さなどの問題がある。そんな状況がIT業界では30年も40年も続いている。

 筆者はIT業界で生きてきた人間として、この問題を何とか解決したいと思い、長年、IT業界の方々に問題提起をしてきた。たぶん15年ぐらい、日経コンピュータやブログや講演などで、それを多くの方々に訴えていると思う。これはある意味で筆者の執念でもある。それは「IT業界のSEは伝統的なSEの世界から脱皮し、技術者としての誇りと当事者意識を持ってイキイキと働いてほしい」「そうなれば、SEは必ず顧客に頼りにされ顧客と一体感も増す。するとプロジェクトはうまくいくし、技術者として顧客の相談相手にもなれる。もちろん、IT企業のためになる」そう考えているからである。

 ではそれを実現するにはどうすれば良いかだが、筆者は「それができるのは第一線のSEマネージャーしかいない。ポイントは、顧客に体制図を出したりSEが常駐しなくてくも、きちっとシステム開発などのプロジェクトをやることである」と断言したい。それは、現役時代にそれに取り組んだ筆者の経験からである。

 読者の中には“なぜSEマネージャーにしかできないのか”と疑問に思う人もいると思うが、疑問に思う人は、ぜひこれまでのこの連載を読んでいただきたい。

 ただ、SEマネージャーがそれをやるのには、SEマネージャー自身が“顧客と営業とSEの三者に信頼される”ことが絶対条件である。筆者はその思いを込めて、改めて年初から“SEマネージャーは逞しくなれ”というタイトルでこの連載を書いている。そしてSEマネージャーの方に、「あなた方は担当している全顧客を知っているか、部下一人ひとりの仕事が分かっているか、営業に頼りにされているか」などと色々と厳しいことを述べた。

 また、SEマネージャーの方に顧客と営業とSEから信頼されるために「一人で顧客をぶらっと訪問せよ。プロジェクトを自分でレビューせよ。営業と積極的にビジネスの話をせよ。社内の支援部門やパートナー企業に顔を出せ」の四つの行動を行うことを提言した。

 きっとSEマネージャーの中には「話は分かる。だが現実はそれどころではない。馬場さんは分かっていない」などと納得がいかない人もいると思う。筆者も、その気持は分からないでもない。だが、会社から組織を預かっているSEマネージャーとしてそれで良いのだろうか。それでSEマネージャーとして本当に良い仕事ができるのだろうかと言いたい。

 そこで今回は、そんなSEマネージャーの方々に改めて考えてみていただきたいことを述べる。それは“SEマネージャーというもの”をどう考えるかについてである。

ビジネスをやり、そして部下を育成する

 SEマネージャーの仕事は、営業マネージャーのように売り上げ達成率○○%というように数字では評価できない。そのためか、SEマネージャーが「自分はどうあるべきか、自分はSEマネージャーとして何をやれば良いか」などの判断は、そのSEマネージャーが“SEマネージャーというもの”をどう考えるかによって大きく左右される。そしてそれがSEマネージャーの日頃の行動になる。