2013年8月に公開された厚生労働省研究班の実態調査結果で、ネットに依存する中高生が国内で約51万8000人に上るとの推計が明らかになった。

 ネット依存の恐ろしさについて、同研究班のメンバーである国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の樋口進院長はこういう(コメントは、『子供のネット依存、治療に当たる久里浜医療センター院長が「生易しい問題ではない」と警告』から抜粋)。

 私は長年、アルコールや薬物に依存する大人たちの治療に携わってきましたが、ここに来る子供たちのネットへの依存度は、アルコールや薬物への依存と変わらない重大なものばかりです

 ネット依存の問題は経験の蓄積がまだない。今の子供たちが大人になる10年後にどんな影響が出てくるのか、まだ全く分かりません。子供時代のちょっとした気の迷いで済まされる問題なのか、それとも人の成長に深刻な影響を及ぼすものなのか、研究は始まったところです

 数年前に「デジタルネイティブ」という言葉が広まったように、今の子供たちは生まれたときからコンピュータやインターネットを身の回りに置いて、慣れ親しんでいる。この環境の下、子供たちはこれらを“便利な道具”として斬新な発想で使いこなしている。その一方で浮上してきたネット依存の問題は、まさに人類がこれまで体験したことがない新たな環境が生み出してきた負の側面といえる。

 海外でもネットの負の側面を注視する動きが広がっている。米マカフィーが公開した、子供たちのネット利用の課題を整理したレポートは、「子どものオンラインでの行動と、親が信じている内容との間には大きな隔たりがある」と親に対して注意を喚起している(コメントは、特集『デジタル世界の知られざる真相、米国10代のネット事情』から抜粋)。

 (10~23歳の)22%が、オンラインでの自分の行動を保護者から隠すためにモバイルデバイスを使用していることを認めています(特集の第2回

 13~17歳の10%以上が、オンラインで知らない人と出会った後に、現実の世界でも実際に会っています(特集の第3回

 13%の青少年がネットいじめの標的になっていると回答しています(特集の第4回

 インターネット環境も、社会環境も日本とは大きく異なるとはいえ、親としては見過ごせない現象が既に米国で問題になり始めている。これと似たことが日本でも現実に起こっていても何の不思議もない。