三菱重工業グループがシステム開発・運用体制に大なたを振るっている。7月1日付けでMHI情報システムズを設立し、長菱ソフトウェアや神菱システムなど主に事業所のシステム開発・運用を担当している8社の100%子会社を統合・再編した。これに先駆け4月には、造船所など事業拠点のシステム部門も再編している()。

図●三菱重工業におけるシステム企画・開発・運用組織再編の全体像
図●三菱重工業におけるシステム企画・開発・運用組織再編の全体像
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 システム開発・運用体制を再編した三菱重工の狙いは、グローバル化を推進するためのシステムと業務プロセスの標準化である。同社のIT戦略はこれまで、造船所などの事業拠点ごとに個別最適で進められてきた。「ITインフラの約2割、人事や経理などの管理系システムの約5割が地域独自だった」(相馬和夫執行役員技術統括本部副本部長)。同社はこれまでの方針を180度転換し全社最適を図るため、システム子会社やシステム部門を統合・再編した。

 システムの企画・開発は、本社に4月に新設した「IT企画部」と「IT推進部」が担う。事業拠点ごとに分散していたシステム部門は、これらのどちらかに移籍する。IT企画部には約100人が在籍し、グループ全体のIT戦略の立案やグローバル標準化を推進する。約200人が在籍するIT推進部では、本社や事業拠点のシステム開発を管轄する。

 実際にシステムを開発・運用するのが、7月に新設したMHI情報システムズとなる。約1000人体制の同社は、長菱ソフトウェア、神菱システム、広島ダイヤシステム3社の従業員のほか、リョーインや名古屋菱重興産など5社のグループ会社でIT事業を担当していた従業員で構成される。

 ただし、グループのシステム会社最大手である菱友システムズは「非連結企業かつ上場している」(三菱重工広報)こともあり、今回はMHI情報システムズには取り込まず、同社と連携しながら三菱重工グループなどのシステムを開発・運用する。

 新体制の下、三菱重工はグローバルでのシステム整備を加速させる。ITインフラの共通化や基幹系システム、製品ライフサイクル管理システムなどの統一を国内外で進めていく。「国境を意識せずにビジネスを進められる基盤をいち早く再整備したい」と、相馬執行役員は意気込みを語る。