米IBMは、全社的に展開するクラウドファースト、モバイルファーストの戦略をメインフレームにも拡張し始めた。同社は2013年7月24日(日本時間)、最小構成価格を790万円に抑えたメインフレームのミッドレンジ新機種「IBM zEnterprise BC12」を発表(写真)。日本では9月21日から出荷する。この発表に合わせ、IBMはzEnterpriseのクラウド、モバイル対応を担う二つの施策を明らかにした。

写真●ミッドレンジのメインフレーム「IBM zEnterprise BC12」
写真●ミッドレンジのメインフレーム「IBM zEnterprise BC12」
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 一つは、zEnterpriseのソフトウエア仮想化環境「z/VM」の最新版「6.3」で、IaaS構築のオープンソースソフトであるOpenStackの管理用APIに対応させたことだ。

 zEnterpriseの用途には、メインフレーム専用OS「z/OS」上で既存の基幹システムを動かすほかに、z/VM上に大量のLinuxサーバーを構築するプライベートクラウドとしての利用法がある。「zEnterprise1台で数千台の仮想サーバーを動かすのが一般的」(日本IBM システムズ & テクノロジー・エバンジェリストの北沢強氏)。この仮想化環境の管理APIをOpenStack仕様に対応させることで、PCサーバーからzEnterpiseまで複数のクラウドを一括運用しやすくなる。

 同社は2013年3月、独自のクラウド仕様を採用する方針を撤回し、自社のクラウドサービスやソフトを、ベンダー非依存のOpenStackに対応させると宣言、IT業界を驚かせた。IBMの製品でOpenStackに対応させたのは、運用管理ソフトウエア「Cloud and Smarter Infrastructure(Tivoli)」に続いて2製品目。将来はPureSystemsなど他の製品やサービスもOpenStackに対応させる。

 もう一つの施策が、z/OSのトランザクション管理ソフトをJavaScriptベースのデータ記述言語「JSON」に対応させたことだ。

 JSONはシンプルな仕様と扱いの容易さから、スマートフォンアプリとサーバーの通信におけるデファクトの地位を得ている。JSON対応により、基幹システム内の経営情報に安全にアクセスするようなスマートフォンアプリを開発しやすくなるという。

 このほかIBMは、z/OS上での利用が多いデータベース管理ソフト「DB2」についても、JSONの標準対応を進めている。同社の技術者向けサイトではJSON対応機能のプレビュー版を公開中だ。「金融業界や保険業界でも、オンラインバンキングや保険契約のスマホアプリ開発のため、データベースのJSON対応に注目が集まっている」(IBMフェロー兼バイスプレジデント兼CTOのティム・ヴィンセント氏)。同社は今後も幅広い製品のJSON対応を進める考えだ。