今回の投稿は、世界中で大ニュースになった、米中央情報局(CIA)元職員が暴露したNSA(米国家安全保障局)の情報収集問題に関するものです。ブランク氏は、インテルのマイクロプロセッサーに用意された技術的な仕組みから、NSAによる情報収集の手法を推測しています。(ITpro)

 ロシアのプーチン大統領の執務室では、パソコンの使用を止めてタイプライターを使うことにしました。彼らは、私たちが知らない何を知っているのでしょうか。

 それは、「インテルが入っている」(intel inside)からではなく、「NSAが入っている」からです。

 最近の話題に注目していない人たちのためにあらかじめお伝えしておきますが、NSA(米国国家安全保障局)のプリズム・プログラムに、今話題が集中しています。プリズムは、マイクロソフトやグーグル、フェースブックなどのサーバーに入っているデータにアクセスし、音声やビデオ会話、写真、電子メール、各種文書などの内容を抽出します。

 プリズムは、NSAの巨大な「大規模な電子監視プログラム」の一部であり、ある人が通信するときに使うかもしれない、全ての通信手段を網羅しています。光通信ケーブルとかインターネットの接続点を通過する全ての情報を盗聴し、あなたが出した電子メールの全てのアドレス、全てのクレジット・カード取引、全ての通話記録とあなたの居所(スマートフォンから取得)をコピーします。

 エドワード・スノーデン氏がこの情報を報道陣に漏らしたところ、大混乱が起こったのです。

 私は「シリコンバレーの秘密の歴史」を書いていたので、NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)局からインタビューを受けました。テーマは、NSAがプリズム経由で収集するSkype Videoの通信量の3倍の能力を新たに持ったと明かした件に関するものです。大半のアメリカ市民と同様、「米国憲法修正第4条が破棄されたとは考えていません」と私は言いました(訳者注:米国憲法修正第4条は、米国市民の個人情報、財産、人権などの尊守をうたったもの)。

 インタビューは、Skypeの話題が中心でしたが、私が最も興味を持ったのは別のことでした。それは「NSAは、暗号化される以前のOutlookの電子メールにアクセスしていた」というものです。それは何を意味するでしょうか。私のコンピュータにある電子メールの暗号化前のテキストが分かるということでしょうか。つまり、暗号化が全く用をなさないということです。どうしてNSAは、それができるのでしょうか。

暗号化を迂回する

 ほとんどのNSAの部外者は、NSAの任務は暗号化されたメッセージを解読することだと考えていましたが、プリズムの暴露が示したように、NSAの本来の任務は全ての通信を読むことであって、暗号の解読は最後の手段でした。

 NSAは、メッセージが暗号化される前、あるいは後に、メッセージを入手する方法を以前から模索しています。キーボードにキーロガー(訳者注:全てのキーの押下履歴を記録する)を設置してキーストロークを記録するか、ディスプレイに描画される文字のイメージを判別する方法です。

 現在では、全てのデスクトップあるいはラップトップ・コンピュータの入力を、NSAが取得する別の方法があります。