著者に聞く

きたみ りゅうじ氏
きたみ りゅうじ氏 イラストレーター兼ライター。前職でプログラマーだった経験を生かして、IT関連の書籍を中心に多数の著書がある。
(聞き手は齊藤 貴之=日経NETWORK)

マンガの特性を生かしたかった

 「マンガ式IT塾 パケットのしくみ」は最初、携帯電話の「パケット」を解説するコンセプトで始めた本でした。当時「パケット料金」や「パケ放題」といった言葉をよく目にするようになりましたが、パケットって何なのかわかっていない人もいるだろう、だったら初心者向けに解説してみようといった感じです。ただ、携帯電話のパケットの話だけを掘り下げても面白くないと思い、パケットの話をきっかけにTCP/IPの解説にまで話を広げました。

 こだわったのは、「マンガ」という点です。当時は「マンガでわかる」というコンピュータ関連書が多数出版されていましたが、その多くはコマの中で登場人物が図を見せながら説明していた。これなら、マンガである必要がない。大きな図と解説文のほうがわかりやすい。マンガなら動きを見せたいと思ったのです。

 マンガは文章やイラストと違い、動きを見せることに長けています。しかも動画と違って、読み手が自分の好きな速さで動きを読み解けるのです。そういった点が、他のメディアより優れており、マンガではそこを生かさないと意味がないと考えています。

プログラマーの経験を生かす

 この本は説明に例えを豊富に使っています。パケットは小包に、IPアドレスは住所といった感じです。私自身が技術を例えで理解するのでこうしています。

 独立する前はプログラマーでした。大学を卒業して未経験でIT業界に入りました。そのときに自分がいかにもネットワークエンジニアやプログラマーといったタイプではないとわかったのです。「いかにも」という人は、TCPがわからないといえばオーム社の「マスタリングTCP/IP入門編」を、C言語がわからないといえばカーニハン、リッチーの「プログラミング言語C」を薦めてくれます。どちらも基本からしっかり説明した本で、多少遠回りでもじっくり読むのには適切だと思います。しかし私は例えを用いて本の内容を自分の言葉に置き換えないと理解できません。自分が苦労したので、なるべく理解しやすくしたいのです。

 例えをその場しのぎで使うと読者を迷わせます。構造を理解するうえで適した例えだけを使うようにしています。また、例えは途中で変えません。この本では最初、IPアドレスを電話番号で例えていたのですが、途中で説明しきれなくなり、住所に変えました。描き終っていた部分はすべて描き直しています。

マンガ式 IT塾 パケットのしくみ


マンガ式 IT塾 パケットのしくみ
きたみ りゅうじ 著
技術評論社発行
1344円(税込)
※現在は書店の在庫のみの販売。増刷については未定