Windows XP対応の業務アプリケーションの改修が難しい場合は、Windows 7/8搭載PCやシンクライアントでも使えるよう「延命」させるのが有効だ。手法としては、仮想デスクトップやアプリケーション仮想化などがある。セキュリティリスク、様々なアプリケーションに対応する互換性の高さ、導入コストなどの兼ね合いから、最適な選択肢を選び取る(表1)。

表1●XPアプリケーション延命に使える仮想化製品の概要
表1●XPアプリケーション延命に使える仮想化製品の概要
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 大きく分類すれば、互換性を重視するなら仮想デスクトップ、コストを重視するならアプリケーション仮想化が選択肢に入る。

 さらにアプリケーション仮想化には複数の方式があり、管理の容易性、必要なライセンスなど異なる点がある。アプリケーションによっては、ある方式では正常に動作しても、もう一方では動かない、といった相性の問題もあるので、入念な検証作業が欠かせない。以下、仮想デスクトップとアプリケーション仮想化の選び方や、その導入事例を紹介しよう。

約600台を仮想デスクトップに

 仮想デスクトップの仕組みを使うと、サーバー上に構築した仮想環境上でWindows XPを動作させ、画面のみをクライアント端末に転送することができる。XPサポート終了でデバイスドライバーの供給が打ち切られても、ハイパーバイザーを介してWindows XP対応アプリケーションの利用を継続できる利点がある。他の方式と比べ、互換性の問題も起きにくい。

 一部のXP搭載PCの環境を仮想デスクトップでサーバーに移行させることで、XP対応の業務アプリケーションを延命させる計画を立てているのが、すべり軸受製造大手の大同メタル工業である(図10)。

図10●仮想デスクトップを導入した大同メタル工業
図10●仮想デスクトップを導入した大同メタル工業
既存PCをシンクライアント端末として用い、Windows XP環境を遠隔で利用する。
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 まず、社内端末の半分に相当する約600台の端末を2013年5月に、ゲストOSとしてWindows 7を導入した仮想デスクトップに移行。2013年度下期に、残りの約600台をWindows 7とWindows XPをそれぞれゲストOSとした仮想デスクトップに移行させる。

 同社はWindows XPからWindows 7への移行に伴う影響調査を行った結果、生産管理など一部の業務アプリケーションがWindows 7では動かないことが判明した。「アプリの改修は費用がかかりすぎ、現実的ではなかった」(大同メタル工業 情報システムグループの嶺川隆利主任)。